英メディアの大多数は安全保障の「協定」に注目

岸田首相の訪英を取り上げる記事で目立ったのは、日英の安全保障に関するトピックだった。ロシアによるウクライナ侵攻で欧州全体が“第3次世界大戦”に神経をとがらせる中、英政府のもっぱらの志向は、防衛に絡む国際関係をどう取りまとめていくかに傾いている。

今回の日英会談では、自衛隊と英軍が互いの国に滞在した際の法的地位を定める「円滑化協定」(RAA)について大枠合意した。日本が欧州の国、英国がアジアの国とこうした「円滑化協定」を結ぶのは初めてだ。

英国がこれほどまでに日本に期待を寄せる理由とは何か。実は日英の防衛当局はともに、「最新鋭戦闘機の導入」という重要イシューを抱えており、これを財政難の中、効率的に作り出さなければいけないという難度の高い課題がある。

コロナ禍でさんざんな目に遭った英国も日本同様、財政面で相当厳しい状況にある。カネがない英政府は今や、自国一国で戦闘機開発は成就しない。コストを抑えるため、日本に対し「ギブアンドテイクで良いので、一緒にやろうと持ちかけた」というわけだ。

新たな戦闘機開発という「共通目標」を持つ日英両国は、実証実験の段階から手を結ぶことを決断した。「日英円滑化協定(RAA)」の締結は、戦闘機開発に当たって情報のやりとりを文字通り円滑にすることを目的としたものだ。

ウクライナ侵攻で中国、北朝鮮への警戒感も増している

5月16日には、複数の関係者の話として「航空自衛隊F2戦闘機の後継となる次期戦闘機について、英国と共同開発する方向で調整に入った」と伝えられた。一方の英国も、現在使っている戦闘機「ユーロファイター・タイフーン」の後継機開発を進めており、2035年ごろの就役を目指す。英国が日本に求める「重要な役目」は、技術や部品の共通化でコストダウンが見込める「共同開発」に応じてほしい、といったものだろう。

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遠いアジアの出来事とはいえ、北朝鮮がミサイルの発射実験を繰り返していることは、G7にとって喜ばしいことではない。岸田首相訪英の日の朝にも発射実験があった。英政府による日英首脳会談終了後の声明を読むと、北朝鮮への批判もしっかり行っていることが分かる。

英国としては「アジアで唯一のG7の国」である日本に、中国や北朝鮮に対する目を光らせておいてほしい、という思いも強い。こうした背景もあって、英国の現地メディアの報道は「新たな防衛パートナーシップを結んだ英日関係」に注目する論調が目立った。