さらに2007年からは、日比谷花壇などの外部企業がアマゾンを通じて商品を売るという「マーチャント@amazon.co.jp」を開始した。まさに「ほしいものは何でも」の境地に近づいているのだ。カタログ上の商品は、いまや1700万アイテムに及ぶという。
チャン社長は香港生まれの45歳。アマゾンが00年に日本へ上陸して以来、長く陣頭指揮をとっている。ふだんは流暢な日本語を話すが、重要項目について語るときは正確を期して英語に切り替え、通訳を介すという配慮をみせる。
チャン氏の言葉を続けよう。
「私たちは商品を最短速度でお客様にお届けするため、システム構築を進めています。たとえばお客様がネット上でクリックした情報をもとに、需要を予測し、それによって在庫を調整するといったシステムです。品揃えが充実していると感じていただけるのは、そのおかげもあるでしょう。それと同時に、スピード感を大切にしているので、在庫自体も分厚くしています」
アマゾンは首都圏の千葉県市川市と八千代市に大規模な物流センター(フルフィルメントセンター)を保有しているが、09年夏には、この2カ所に加えて大阪府堺市にもフルフィルメントセンターを竣工、稼働させた。従来以上に手厚い在庫を持てるほか、京阪神をはじめ西日本各地への配送スピードが上がったため、利便性の面でも改善効果が著しい。
一例を挙げれば、堺フルフィルメントセンターの稼働直後の09年10月、関東地方一都六県と近畿地方二府四県を対象に、朝発注すれば当日中に商品が届く「当日お急ぎ便」を導入した。
あわせて、従来は「1500円以上は無料」としていた配送料を同年9月から価格に関係なく全商品無料とするキャンペーンを開始した。とりあえずは10年3月末までの試みだが、発注の増加や顧客満足度の向上という効果がみられたため、「満足している」とチャン社長。キャンペーン継続の可能性も高いという。
仮にこのまま配送料無料が定着すれば、品揃え、利便性に加え、価格の面でもアマゾンは圧倒的なアドバンテージを獲得する。業界関係者はいま、固唾を呑んで彼らの動きを見守っている。