政府の失政により景気が悪化すると、家計は将来を悲観し、これまで消費していた金額の一部を貯金に回すようになる。その結果、企業はモノが売れなくなるため、販売価格を下げてモノを売ろうとする。しかし、コストが下がって販売価格を下げたわけではないから、利益水準を維持するために設備投資や人材採用を控えるので、企業の成長率は低下するし、労働市場は悪化する。
更にコストを抑えるべく非正規雇用を積極的に雇うようになり、正社員の賃金も上げず、賞与も減少させていくだろう。そうなると、家計は可処分所得が減少したり、非正規雇用が増えることで将来不安は加速し、更に消費を抑えて貯金をするようになる。
「ステルス値上げ」は企業の恐怖心の表れ
こうなると再び企業の売り上げは減少するため、更に販売価格を下げてモノを売ろうとする。このように、一度デフレスパイラルに突入してしまうと、経済が縮小均衡していき、結果として失われた20年、30年という本来は絶対に避けなければならない事態を招くことになる。
デフレスパイラルを経験してしまうと、企業はコスト増を価格転嫁することで、モノが売れなくなってしまうという恐怖を必要以上に感じるようになる。その結果、前項で確認したように、価格支配力を失っていき、企業努力でなんとかコスト増を吸収しようとする。
しかし、いずれは限界が来る。そこで誕生した苦肉の策が「ステルス値上げ」や「実質値上げ」と呼ばれる手法だ。値段もパッケージの大きさも据え置いており、見た目では何も変わらないようにしているが、パッケージを開けると内容量が減っているというものだ。これはこの数年で多くの方が体感したのではなかろうか。