我々は、心臓の弁に何らかの障害を抱える心臓弁膜症の患者さんには「利尿剤(=おしっこが出やすくなる薬)」を処方します。心臓の負担を和らげるためです。これも「血管内水分」を抜くというメカニズムです。

一番簡単なダイエットが「利尿剤」と言われることがありますが、サウナではこれを強制的にやっていることになり、健康的な方法ではありません。

狭心症の人は「超低血圧」「虚血」「脱水」のトリプルパンチ

脱水した血管の中はどうなっているのか、考えたことはあるでしょうか。血管内の血液量は体重65kgの人で5ℓ程度。このため血液中の水分が失われると水分減少状態(=血管内脱水)となって、血液粘稠ねんちょう度(=血液のドロドロ度)が高まります。

血液がドロドロに濃縮することによって高まるリスクは、脳梗塞や心筋梗塞、さらには痛風、尿管結石の発作のリスクです。

低血圧による虚血も伴っていますから、高血圧で降圧薬を服用している人、血管が狭くなっている人、狭心症の人は、「超低血圧」「虚血」「脱水」のトリプルパンチに見舞われていることになります。本当に気をつけないと、命を落とすことにもなりかねません。

さらに怖いのは、脱水で腎臓に血液が行き渡らなくなることです。これは、血圧が下がり脱水症状を起こす「腎前性腎不全」と呼ばれ、「尿細管」の障害など腎臓に少しずつダメージが蓄積されます。こうなると腎臓機能がなかなか回復しない場合もあるのです。

リスク④ 悪玉高血圧~水風呂で一転「超高血圧状態」

第4に、サウナ後の「水風呂」の恐ろしさです。私は医学生時代、血圧を計測したうえで冷たい氷水に手を入れて、血圧の変化を調べる実験をしました。若い同級生は何のことはなかったですが、40歳の同級生は急に血圧が上がり、めまいを起こして倒れてしまいました。

彼は持病を持っているわけでもなく、血圧がやや高めくらいの健常な人でした。それでも「寒冷刺激」によって「交感神経反応」がおこり、手だけではなく全身の血管が締まり、血圧が急上昇して倒れてしまったのです。

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「にわかサウナー」は要注意

これと同様、サウナでバンバンに血管が広がった直後の水風呂では、「寒冷刺激」による「交感神経反応」で間違いなく、危険なほど血圧は上がっています。何という血圧の激しい上下動でしょうか。このような危険な高血圧状態を「悪玉高血圧」と呼ぶ内科医もいます。

どのくらい血圧が上がっているかは個人差があるでしょう。友人が倒れた経験から、私もサウナを始めた当初は水風呂には気をつけました。サウナ後には「ぬるめのシャワーを頭から浴びてから水風呂に入る」「慣れてきたら半身浴」「さらに慣れてきたら全身」という段階を踏みました。