日本人に潜む学歴コンプレックス
なお、大学院ではないが、タレントの小倉優子さん(38歳)がテレビ番組の企画で、早稲田大学の合格を目指して勉強に励んでいる。朝5時起床を4時に改めるなど、仕事と主婦業の隙間時間を使い、努力しているが、「なぜいま受験するの?」や「目標が早大合格ではなく早大卒業であってほしい」という声もある。
一方、高校の通信過程を3月に卒業したタレントのスザンヌさん(35歳)は今春に日本経済大学に入学。芸創プロデュース学科ファッションビジネスコースで学ぶことになった。入学式後に取材を受けたスザンヌさんは、「高校を卒業し、学びを深めたいとの思いが強くなり、入学を決意しました。洋服の作り方や広め方を学び、将来は自分で洋服を作りたい」と話している。コチラには厳しい声はほとんどなく、「いくつになっても学びたいという気持ちは素晴らしい」というような称賛の声が強い。
小倉さんとスザンヌさんはともにシングルマザーで、境遇・キャラクターはカブる部分がある。しかし、大学選びは方向性の違いがあり、ネットの声が割れている。なぜ小倉さんは叩かれるのか。
そこには日本人に潜む“学歴コンプレックス”があるのかもしれない。
大学の進学率は1990年が24.6%、1995年が32.1%、2000年が39.7%、2005年が44.2%、2010年が50.9%と右肩上がりで推移。一方、18歳人口は1990年の201万人から2020年は116.7万人に大幅減少している。
現在の40~60代は現在と比べて同学年の人口が多く、受験戦争も激しかった。希望していた大学に進学できなかった人は少なくない。それに受験の仕方も現在ほど多様ではなかった。
いまだに一般選抜(一般受験)が「善」で推薦入試が「悪」という風潮もあるが、時代は大きく変わっている。
文部科学省が実施した2020年入試の調査では、私立大学の入学者のうち、AO入試が12.1%、推薦入試が44.4%だった。半数以上は一般入試以外で入学しているのだ。早稲田大学ですら募集定員全体に占める一般入試以外の割合を6割まで引き上げる目標を立てている。
さらに国立大学協会も2008年にAO入試(現・総合型選抜)と推薦入試(現・学校推薦型選抜)の合格者が占める割合を、「入学定員の5割を超えない範囲にする」ことを掲げた。現時点では5割に遠いが、近年は増加傾向にある。
大学もグローバルな人材を育てるべく、入試でも多様性を意識している。ペーパーテスト以外の“評価”も重要視される時代になっているのだ。
この現状を知れば、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科に入学した著名人を「学歴ロンダリング」などというのは筋違いということになるだろう。いずれにしても「肩書き」としての学歴ではなく、すべての学生さんには講義などで得た知識や経験を生かして、社会に貢献することを意識しながら新たな学校生活を送っていただきたい。