30、40代のサッカーやラグビー、バレーボールの元日本代表や、50代のタレントなどが今春、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科に合格した。なぜ、入学を希望したのか。SNSには「学歴ロンダリングではないか」と口さがない人もいるが、実際はどうなのか。スポーツライターの酒井政人さんが取材した――。
早稲田大学
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著名人が続々合格「早大大学院スポーツ科学研究科」の謎

この春も多くの若者が“新たな学び”を得るために進学した。そのなかで近年、世間の耳目を集めているのが名門大学の大学院に進む著名人だ。

私学の雄、早稲田大学の大学院スポーツ科学研究科には4月からタレントの恵俊彰さん(57歳)、サッカー元日本代表GKの川口能活さん(46歳)、同MFの福西崇史さん(45歳)、ラグビー元日本代表の五郎丸歩さん(36歳)、元バレーボール女子日本代表の荒木絵里香さん(37歳)らが入学した。

少し前になるが、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科にはお笑いコンビ「ロンドンブーツ1号2号」の田村淳さんが2019年に進学して、昨年(3月)卒業している。

文部科学省の調査によると大学進学率は2021年度に過去最高の54.9%に到達した。そして学部卒業者の大学院進学率は11.3%(2020年度)。10人に1人は大学院に進学する時代になっている。

しかし、上記に挙げた著名人たちは若者とはいえず、前年度まで大学に在籍していたわけでもない。五郎丸さんは早稲田大学スポーツ科学部を卒業しているが、他の元アスリートは大学を卒業していない。“亜種”ともいえる大学院進学組なのだ。

近年は大学院に進む社会人が増えており、大学を卒業していないものの、大学院に進学するケースも目立っている。どのような“からくり”があるのだろうか。

文部科学省が規定する修士課程・博士課程(前期)の入学資格は10項目ある。そのなかで大卒以外の人に当てはまるのが、「大学院において個別の入学資格審査により認めた22歳以上の者」という条項だ。

つまり各大学院が独自に実施する審査により認められれば入学資格を得られるわけだ。なお早稲田大学大学院の社会人入学試験は、「原則として3年以上の実務経験を有し、当研究科において、個別の入学資格審査により、大学を卒業した者と同等以上の学力があると認めた者で、入学の時点で最終学歴卒業(修了)後、3年以上経過し入学までに22歳に達する者」となっている。

その審査は「入学資格審査票」という書面で行われ、試験としては面接(口頭試問)のみになる。大学一般入試のような筆記試験はない。社会人で積んできた実務経験などからジャッジされるわけだ。

早稲田大学大学院の入学式に出席した恵俊彰さんは、「夢のような気持ち。今年58歳になりますが、皆さんと一緒にスポーツについていろいろと勉強していきたい。やる気がみなぎっています」と語っている。恵さんは高校の頃から早稲田大学に憧れを抱いており、3浪の末、進学を諦めた苦い経験を持つ。またPL学園高校卒の桑田真澄さん、中京大学体育学部卒の青山学院大学陸上競技部・原晋監督も早稲田大学大学院スポーツ科学研究科の修了生だ。