全国的な規模で共鳴者が存在

独自解釈の内容を具体的にいえば、大和民族をたたえる民族主義的な傾向、Qアノンにはないオカルト的な説や描写の追加であり、最終的には、世界を影で支配する悪い宇宙人の種族と、善なる宇宙人の遺伝子を引き継ぐ大和民族や龍神との戦いという物語にまで、Qアノンの主張を換骨奪胎してしまった。彼らの陰謀論のなかで、新型コロナワクチンの接種は悪であり阻止しなければならないものとされた。

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この独自の陰謀論が完成すると、2021年12月26日に「神真都覚醒」が宣言され、イチベイをリーダーとする神真都Qが設立された。YouTubeやTwitterを使って活動をしていたこともあり、すでに共鳴者は全国的な規模で存在していた。とりわけ、イチベイの強いタレント性がファンにはたまらなかったようだ。

神真都Qは設立から2週間足らずの1月9日に、東京で大規模な反ワクチンデモを実施している。こうした活動を支え、大所帯をまとめるのに活用されているのが、全国の地域グループごとに開設されているLINEのオープンチャットだ。接種妨害行動のような重要案件は極秘裏に計画され連絡が行われているが、幹部からの通達の拡散や構成員同士の会話は、24時間いつでもLINE上で行われているのである。

こうしたネットツールの使いこなしは神真都Qの特異性のように語られがちだか、むしろネットツールを使わないと活動が成り立たないほどの組織化にこそ、彼らの本質がある。

陰謀論グループには珍しい中央集権的な組織化

一般的には、陰謀論の提唱者は匿名で、統括する組織も特になく、賛同者同士の交流は何かのイベントの際に行われる程度だった。ネット掲示板を発祥の地とし、賛同者が会員制交流サイト(SNS)で活発に交流しているQアノンはその意味で新しいが、やはり明確な組織化はなされておらず、提唱者「Q」は今も匿名である。

だが神真都Qは、教祖らしく振る舞うイチベイを頂点にした、1万3000人の構成員を持つとされる中央集権的な組織である。しかも全国くまなく地方組織がつくられているため、連絡網としてネットツールが不可欠なのだ。

構成員の個人情報を事細かに管理している点でも、神真都Qは中央集権的である。参加するには本名だけでなく、住所やメールアドレス、電話番号まで提出しなければならない。2022年3月に会員制度が始まると、入会金900円、年会費3600円の納付とともに、顔写真と会員カード用の生年月日を含む個人情報を再度提出するよう求められた。ここまで個人情報に執着する陰謀論カルトは、今までなかったのではないだろうか。