なぜ、正社員として内定が出たのにうまくいかないのか

大学卒業後、長女は正社員として事務の仕事をすることになりました。しかし、職場では緊張してしまうためか、仕事がまったくといっていいほどうまくいきませんでした。電話対応では、お得意様からの話を聞いていてもその内容が頭に入っていかず、何度も聞き返してしまう。受け答えができず「あー、えー」といった発言ばかりを繰り返してしまう。その結果「これじゃあ仕事にならない。あなたじゃなくて別の人に変わって!」といったクレームを何度も受けてしまったそうです。

書類の整理も苦手で、たくさんある書類をどのファイルにわけたらよいのかを考えるとパニックになってしまい、その場でオロオロしてしまう。その様子を見た上司からは「そんな単純な仕事もできないのか!」と叱られてしまう始末。

ホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)も苦手でした。何をどう報告したらよいのか?  そもそも何を相談したらよいのか? といったことが理解できず、上司から何度も指摘を受けているのにできませんでした。

その他にも、長い説明になると理解できない。耳から聞いた情報を一時的に頭の中にとどめて考えることが難しい。メモを取ろうとしても書くスピードが遅く、説明をどんどんされるとメモが追いつかない。そのようなことで悩んでいました。

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長女が一番苦しんだのは、仕事を素早く正確にこなすことができず、作業を終えるまでにとても時間がかかってしまうこと。通常作業量とされる量の半分以下しかできなかったそうです。そのため、上司や先輩社員からは「努力が足りない」「もっとまじめにやりなさい」「給料泥棒」といったことを毎日のように言われてしまいました。もちろん長女はふざけているわけでは決してなく、まじめに取り組んでいます。しかし、周囲にはそれが理解されることはありませんでした。毎日のように叱られたり馬鹿にされたりしてしまう状況にいたたまれなくなり、数カ月で退職してしまいました。

長女は「仕事をしなければ生きていけない」といった思いが強く、すぐに再就職をしました。しかし、新しい職場でもまったくうまくいきません。そして数カ月で退職。その後、再就職。そのようなことを何度も繰り返していきました。

長女は仕事が休みの日は一日中家にこもることが増え、母親に向かって職場での愚痴や自分のふがいなさを何時間でも話していたそうです。

長女が24歳の頃。毎日のように職場で叱られたり馬鹿にされたりすることで、すっかり自信を失い抑うつ状態に陥っていきました。「このままじゃまずい」そう思った長女は、会社員の時(厚生年金に加入中の時)に心療内科を受診しました。

心療内科の医師に職場での様子を話したところ「専門病院で発達障害の検査を受けたらどうか?」といったアドバイスをもらいました。アドバイスに従い検査を受けた結果、長女は発達障害であるということが判明。しかし、職場でカミングアウトをすることがどうしてもできず、やむなく退職。その後、長女は再就職をすることなく自宅にひきこもってしまいました。