一見損に見えて現金を持っていることが有効

たとえば1億円で買ったタワマン。相続評価では6000万円で評価され、その差額分4000万円の相続税率分だけ儲かったとしても、その後そのマンションが相場を2割下げてしまえば得した税金なんて吹っ飛んでしまうのだ。

2割下がったとしても売却して借入金を返済できれば良いが、ローン返済ができなくなるケースも考えられる。いったい何のための相続対策だったのか、子供たちに暗く厳しい未来を残すことになるのである。

子供たちが楽できるように考えて決断した対策が彼らの未来を苦しめる。何とも皮肉な結果であるが、これからの未来は、この失敗してしまった相続対策の犠牲となる「相続難民」が続出しそうである。

こうしたピンチに陥った場合、最も有効なのはやはり現金を持っていることなのである。現金は相続時に額面通りの評価となってしまい、なんだか損をしたような気分になるが、実はそこが間違いなのだ。

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いくら相続税の税率が高くとも、額面以上に税金をとられることはない。不動産は、一見すると低い評価額になることから、不動産にしておいた方が得のように思える。

だが、そのように考える人は、なぜ不動産だと現金よりも低く評価してくれるのかに、考えが及んでいないのである。

大きなテコは自分の身を滅ぼす刃に変わる

不動産は市況商品なのである。この先地価が上がるかもしれないが下がるかもしれない。だから下がった場合に備えて低く評価しているのである。

牧野知弘『不動産の未来 マイホーム大転換時代に備えよ』(朝日新聞出版)

土地とはいえ、天変地異が起こるかもしれない。現金は手にもって逃げることができるが不動産は動かすことができないのだ。

建物にいたっては経年劣化する。劣化してしまう資産に現状での高い評価をつける訳にはまいらない、だから圧縮率も高いのだ。

特に、策を弄しすぎて身の丈に余る借入金を背負う。これが一番危険だ。借入金は事業をさらに推進、拡大するエンジンとしては極めて有効に機能するが、ただ節税するためだけに使うテコであるならば、大きなテコは、自分の身を滅ぼす刃に変わることを肝に銘じるべきであろう。

無理したツケは必ず戻ってくる。節税不動産の未来は相続難民の時代の到来を意味しているのかもしれない。

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