サラリーマンの部課長クラスの間でブームに

またワンルームマンションは同じように節税したいサラリーマンがいれば転々流通するのではないかという思惑もあり、手頃な節税手法として定着したのだった。

不動産投資して赤字を作るとはどういうことかと言えば、ワンルームをほとんど借入金で買って、金利を経費計上する、建物の減価償却を経費計上する、テナント確保等でかかる経費、修繕費などを経費計上するなどして赤字所得を作り、所得税を節税するのがその手法だ。

所得が高いほど節税効果が高いため、平成バブル期などにはサラリーマンの課長、部長クラスの間でワンルーム投資はブームになった。当時のサラリーマンは大抵の会社が副業禁止だったが、なぜかワンルームなどに投資して運用しているのは副業とはみなされないために大勢が手を出したのだ。

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しかし、何度も言うように不動産投資にあたっては多くのチェックポイントがある。ワンルームの場合は需給バランスと投資家の懐具合だ。

郊外の田園地帯で、テナントなんてあまり見込めないような場所で相続税対策だけに目が眩んで投資したアパートオーナーがその後、同じようなアパートが周辺に林立してテナントを奪われ、空室に苦しんだことがワンルーム投資でも起こっているのだ。

「売却もままならず放置プレー状態にある」

都内では池袋や大塚などでこうした節税ニーズをとらえたワンルームマンションが平成バブル期などに大量供給されている。当時のワンルームは、5坪から6坪程度と狭く、水回りであるバス、トイレ、洗面が一室に詰まった3点ユニットバス。

ところがやがてこうした狭小ワンルームは行政から認められなくなり、その後に建設されるワンルームマンションは住戸も広くなり、トイレとバスが分離するタイプがあたりまえになる。

棟数が増えるにしたがってテナントの審美眼も磨かれ、古いタイプのワンルームは賃貸マーケットでの競合で負けるようになる。

テナントが入らなければ、赤字は膨らんで節税効果は良くなる一方、いつまでも空室では、実入りが乏しくなって借入金の返済が覚束なくなる。賃料を下げる、フリーレントを長くするなど、節税効果はともかく、不動産投資としては完全な失敗となる。

マーケットの変化に追随できない、収益は下がる、小さなワンルームは時代のニーズに合わないということで排除され始めると、マーケットでのリセールバリューは当然のことだが下落する。

運用損に加えて売却損まで負わされるのでは、節税効果どころの騒ぎではない。今、そうしたワンルームマンションが池袋や大塚に限らず全国に多数滞留している。滞留、という意味は「売却もままならず放置プレー状態にある」ということだ。