50代の心情は複雑…

働く環境が劇的かつスピーディに変化している今、この「環境制御力」の向上がきわめて重要だ。

ところが、人は利益より損失に対してずっと強く反応するため、エリートほど自分がかつて手に入れたものに固執し、変化を受け入れることができない。年齢を重ねるほど手に入れた褒美も多いことに加え、自分のやってきたことへの自負心もあるので、なおさらである。

その微妙かつ複雑な50代の会社員の心情を浮き彫りにしたのが、2020年12月に行われた「ミドルエイジ層の転職と能力開発・キャリア形成~転職者アンケート調査結果~」(独立行政法人労働政策研究・研修機構が実施)だ。

50代男性の86.1%が正社員としての転職に成功している

この調査は、30~50代前半の会社員を対象に実施したもので、年齢別の分析に加え、転職者と非転職者との比較をした点が、最大の売りといえる。

河合薫『THE HOPE 50歳はどこへ消えた?』(プレジデント社)

転職者は、調査が行われる2020年12月までの3年間に転職経験のある会社員の男女4205人(男性2582人、女性1623人)。転職先への入社時期は、18年が全体の4割、19年が4割弱、20年が約2割だった。また、2020年の入社者は、1回目の緊急事態宣言が発令される以前の3月までが全体の4.9%、4月以降は15.8%で、男性では年齢層が上がるに連れて高い。

転職理由は、82%が自己都合で、18%が会社都合。年齢が上がるほど会社都合が増えて、50代は20%超だったので、中にはリストラも含まれていると考えられる。

一方、「50代で正社員になるのは難しい」と一般的にはいわれているが、男性の場合、50代の実に86.1%が「正社員」で採用されていた。女性では45歳以降、正社員50%前後で、契約、パートに分散するため、これ以降は男性の回答のみ見ていくことにする。

「正社員」で雇用された人のうち、「大規模転職」(転職前より従業員数が多い)は、40代が43%前後と多かったのに対し、50代は「小規模転職」(転職前より従業員数が少ない)がほかの年齢層より多く、34.2%。月収も、年齢が高いほど前職に比べ低い傾向が認められ、月収が下がった人(20%超低下と5~20%低下)は、40代後半が29%であるのに対し、50代は34.9%と4割弱が下がっている。