他方で、常時、製品イノベーションを行っている「プロ顔負け」の創造的消費者は消費者イノベーター全体でどのぐらいいるのだろうか。調査によれば、毎年3回以上製品イノベーションを行っている消費者は日本で22%、米国で8.9%だった。この結果は低い割合ではあるが多産型消費者イノベーターが存在することを示している。
ただし、そうした多産型消費者イノベーターでも一つの製品分野でイノベーションを行っているとは限らない。事実、データで確認すると日本の消費者イノベーターの50.7%、米国で54.8%が複数の製品分野にまたがり製品イノベーションを行っていた。
特に、年平均3回以上製品イノベーションを行っていた多産型消費者イノベーターについていえば、さらに割合は上がっていた。日本の場合は17名のうち15名(88.2%)が、米国では10名全員が2種類以上の製品分野で製品イノベーションを行っていた。
つまり、こういうことだ。1000人に数人程度存在する多産型消費者イノベーターを見つけ出したとしても、同じ製品分野で製品イノベーションを行うとは限らない。彼(彼女)を見つけ出し、追跡しても、生み出される製品イノベーションは自分たちが提供する製品と関係ない分野のものかもしれない。多産型消費者イノベーターを発見して追跡することが必ずしも得策だとはいえないのである。
ではメーカーがこれまで説明したような特徴を持つ消費者イノベーターの存在を考慮して製品アイデアを創造していくにはどのような工夫が必要になるのだろうか。こうした問いに対して最近のユーザー・イノベーション研究は「コミュニティ」という視点で消費者イノベーターを把握することの重要性を主張しはじめている。