整理整頓も強制しない

【藤田】あと、バットやバッグをきれいに並べないといけないとか。そりゃ汚いよりはきれいな方がいいとは思いますけど、「野球をやる前にまずは整理整頓」って、順番が逆でしょ? と思うんですよね。

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【辻】うちは道具の並べ方とかめちゃくちゃ汚かったんです。あまりにも汚いのでちょっと改善しようと思って、でも「ちゃんと並べろ!」と強制はしたくなくて。そこで思いついたんですが、ブルーシートを細長く切って区切り線と背番号を書いたんです。そうしたらみんなそこからはみ出ないようにバッグを置くようになったんです(笑)。でもまぁその程度ですよね。必要以上にビシッと並べさせたりはしないですね。

【藤田】うわぁ、頭いいですね、そのやり方! 強制せずに自発的に動くように仕向ける。

【辻】チェンジになった時に自分のグローブがベンチのどこにあるか分からない子どももいるんですよ。「とりあえずこれで守れ!」と言ってその辺にあるグローブを渡したりとかしています(笑)。

【藤田】多賀の弱点、そこなんですね(笑)。

【辻】そうなんです。多賀に欠けているのはそこだと思うんです。保護者が全部片付けてくれたりしていますからね。それを自分のものだけでいいから自分で片付ける、自分で管理できるようになること。それを強制的にやらせるのではなくて、勝手にそうなってしまう流れというか仕組みを作ろうと今いろいろと考えています。

【藤田】「多賀に整理整頓だけは勝とうぜ!」って、近隣チームで整理整頓が上手になるチームが増えるかもしれないですね(笑)。

藤田憲右『多賀少年野球クラブに学びてぇ!』(インプレス)

【辻】そうなったら、みんなで見学に行って、僕がオーバーに「うわぁ! すごいなこのチーム! めっちゃきれいに並んでるやーん!」って、それだけ言って帰ってきます。でも「やれ」とは絶対に言わない。そこで子ども達がどうするかですね。

【藤田】整理整頓をちゃんとさせているチームは嫌でしょうね。「あんな道具が散らかっているチームに負けた……」って(笑)。

【辻】(笑)。

【藤田】でも順番的には正しいですよね。野球で強くなって日本一になって、日本一のチームがこれじゃ恥ずかしいから整理整頓しようっていうね。地位が人を作るっていうやつですよね。

【辻】そうですね、本当にそんな感じですね。

【藤田】いいですね。野球が強くて礼儀正しくて、整理整頓も行き届いていて、っていう完全無欠のチームよりも「うちはこういうところが本当にダメで」っていう部分があるのが。日本一なのに親しみやすくて(笑)。

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