コース間違えがなければ世界記録は出ていたのか⁉

二度のコース間違いの“被害者”はトップ集団にいた5人だ。特に優勝したキプチョゲは世界記録を出せる可能性もあっただけに、“ダメージ”は大きかった。

第1集団は1km2分54秒ペースの設定で、コース間違えのあった10~11kmのラップは3分09秒に後退した。タイムロスだけで15秒ほどあったと考えられる。さらに無駄なUターンをしたことで体力が削られ(※第1集団は50m8.7秒ペースで走っており、Uターンするためにペースを落とし、再びペースを上げることに体力を使う)、メンタル的にも影響したはずである。また集団の隊列が崩れたことで、それを立て直すのにペースメーカーはさらに余計なエネルギーを使ったことになる。

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結果的に見れば、キプチョゲは26km付近でペースメーカーの前に出てレースを進め、大会新&国内最高となる2時間2分40秒で優勝した。世界記録(2時間1分39秒)には約1分及ばなかった。

終盤が向かい風になったため、順調にいったとしても世界記録の更新は難しかったかもしれない。だが、2度のコース間違いがなければペースメーカー(30kmまで引っ張る予定だった)にも選手たちにも体力や精神的な余裕があり、上位3人のタイムは20~40秒ほど上がっていたと予想する。

大会側は「大きなトラブルはなかった」という認識のようだが、レース終了後、他の選手などから「上位3人は規定のコースと違うルートを走ったから失格ではないのか」という抗議があった場合は大きなトラブルになった可能性もある。

日本人トップに輝いた鈴木健吾(富士通)は4位。賞金は100万円だが、上位3人が失格となれば、「繰り上げ優勝」になる。そんな優勝はうれしくないだろうが、手にする賞金は100万円から1100万円にUPすることになるのだ。