3月6日に開催された東京マラソン。多くの好記録が誕生した一方、大会運営で重大なミスが発生した。スポーツライターの酒井政人さんは「選手を先導する白バイが走るコースを二度間違えたことでタイムが大幅にロスしましたが、大会側は『誰に責任があったかというとなかなか難しい』とあやふやな対応です」という――。
2019年1月11日 東京・神宮外苑にて 警視庁機動隊観閲式 2019
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2年ぶりの東京マラソンに水を差した「コース間違い」

2年ぶりの開催となった東京マラソン2021は大いに盛り上がった。男女の世界記録保持者が初参戦して、市民ランナーも3年ぶりに出走。東京都にはまん延防止等重点措置が適用されていたとはいえ、沿道には多くの観衆がつめかけた。

男子は、東京五輪金メダルのエリウド・キプチョゲ(ケニア)が2時間2分40秒の国内最高記録を打ち立て優勝した。

たが、途中で信じられないようなハプニングが起きた。10km過ぎを快調に飛ばすキプチョゲを含むトップ集団が走るコースを間違えたのだ。

テレビ中継をご覧になった方ならあのシーンだなとピンとくるだろう。選手たちが一度は右折した後、すぐにUターンした場面だ。

東京マラソン終了後の会見は分刻みでスケジューリングされているが、レースディレクターの会見は6分ほど遅れてスタートした。コース間違えについては、会見場にいた東京陸上競技協会の平塚和則理事長が以下のように説明した。

「間違えたところもコースの一部なんですが、若干迂回をしたかたちになりました。大きな車がいて、そのすぐ後ろに選手がいたもんですから、大きな車は迂回をしてUターンをするように設定をされておりましたので、選手がそのまま走って迂回のほうに行ってしまったと。若干ロスはあったと思うんですけど、大きなトラブルということはなかったのかなと思っております」

説明は要を得ていなかった。間違えたのは確かだが、誰がどのように間違えたのか、原因は何なのか。うまくイメージできなかったのは筆者だけではなかっただろう。その後、「大きな車」は「テレビ中継車」であることがわかったが、それでもまだ釈然としない。

「スタッフの誘導に問題はなかったのか?」という質問には、同理事長はこう答えた。

「そこにいた審判を呼んで話を聞きましたが、なかなか車が大きいので、立っているとひかれると思ってよけていたら車が通過した。戻ったらもう選手が車について行ってしまったということです。誰に責任があったかというとなかなか難しい。これから調査をして、来年はそんなことが絶対ないようにしたいなという反省点は持っています」

一方で早野忠昭レースディレクターはこう釈明した。

「ロスがかなり影響するかと思ったんですけど、その区間は10秒ぐらいのロスをしました。しかし、その後、1km2分54秒のペースに戻ったのでひと安心しました。あとでキプチョゲ選手のエージェントとも話をして、『ノープロブレム(問題ない)』と言ってくれました。ちょっと迷惑をかけたなと私自身は思っています」

筆者はプレスルームでテレビ中継を観ていたが、白バイが誘導ミスをしたように見えた。しかし、2人の口からは「白バイ」という言葉は一切出なかった。結局、彼らの説明を聞いても事情をうまく飲み込むことができなかった。

しかたなく帰宅後に問題のシーンを何度も見直した。さらに情報収集をして、自分のなかで整理して、ようやくコース間違いの全貌が見えてきた。