「捨てられるかもしれないから、殺すしかないと思った」

さらに、無事だった4人のうち1人は、男性でお金もなさそうだったから、犯行に至らなかったと説明したが、殺害された9人のうち1人は男性(Cさん)だ。彼も裕福だったわけではなく、白石が奪ったのは数千円ほどである。似たような境遇にもかかわらず、殺害に至ることもあったわけだが、その違いはなんなのか。ほかの被害者の殺害動機も含めて質問する。

「1人目の女性(Aさん)は早く口説けました。そして、お金を持っていることが分かったのです。だからヒモになろうと思ったんです。アパートの契約のお金を出してくれました。しかし、ほかにも男がいることが分かりました。ということは(自分を捨てて)その男を選ぶかもしれない。Aさんは、相性のいい男性を探していましたから。出て行けと言われるかもしれない。殺すしかないと思ったんです」

殺害動機は性的な理由が占めるように…

白石の話を少し整理すると、ここでいう「ほかの男」とは3人目に殺害されたCさんであろう。つまり白石は、Aさんが自分の代わりにCさんを選ぶかもしれないと思い、そうなる前にAさんを殺害。Aさん殺害がバレるのを恐れ、Cさんも手にかけたようである。

ただ白石は、CさんがAさんの彼氏なのか、もしくは恋愛感情を抱いているかを確認していない。ということは、Aさんは白石の思い込みで殺害されたことになる。もし白石が2人の関係を確認していたら……。その後の展開も変わっていただろうと、私は想像した。

続けて白石は、ほかの殺害動機についても話した。

「昏睡状態(失神状態を指すと思われる)のままでのセックスに目覚めたんです。でも、そのまま帰らせると通報されるかもしれない。執行猶予中だったので、見つかれば、今度は一発で実刑になるかもしれない」

白石が、失神状態で性的な行為を初めてしたのはAさんだ。面会ではいつの時点で目覚めたのかはっきりしない(公判で明らかになる)。が、連続して殺害に至る動機自体は、Aさんを殺害したときから、性的な理由が占めるようになったようだった。