契約が更新されないなら話が変わるが、ロシア側から契約を破る形でヨーロッパ向けに天然ガスの供給を絞るような行為はしないだろう。

なお昨年末以来、ロシア産天然ガスをヨーロッパに送るパイプラインの一つ、ヤマル・ヨーロッパの流れが「逆流」した。

ロシアがヨーロッパ向けの供給を絞ったという観測が流れたがロシアはそれを否定、価格差を利用して利ザヤを稼ごうとするドイツがポーランドなど中東欧に意図的に天然ガスを逆流させていると主張するが、真相は不明だ。

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ロシア産の石油・ガスの禁輸措置は最終手段

他方で、ロシアに対する経済制裁の一環として、欧米側がロシア産石油・ガスの禁輸措置に踏み切るという筋書きも想定される。これもまた、ハードルが極めて高い選択となる。

一見すると、欧米対ロシアという構図が成立しているウクライナ情勢だが、その欧米も一枚岩ではない。アメリカへの依存度も可能な限り下げたいのがヨーロッパだ。

歴史的に、ヨーロッパはアメリカに対して一定の不信感を抱えている。

アメリカ産の原油やエネルギーの輸入比率を上げた場合、アメリカでトランプ前政権のような高圧的な政権が誕生すれば、逆にアメリカとの関係悪化でエネルギー問題が生じるだろう。その時にロシアに泣きついたところで、ロシアがそれに応じるか定かではない。

それに、実際に欧米がロシア産原油の禁輸措置に踏み切ってしまうと、ヨーロッパとロシアの将来的な関係改善の道が閉ざされてしまいかねない。

つまりヨーロッパにとって禁輸措置は、自らの手でロシアとの間で禍根が残るような選択をすることと同義である。このハードルは極めて高く、取られるとしても最終手段ではないだろうか。