火力発電で走るEVはエコではない?
「EV化で車のCO2排出をゼロにしても、火力発電の電力で走っていればCO2削減にならない」という意見があるが、これはその通りだ。
国内のCO2全排出量のなかで、自動車が占める割合は約16%。一方、最も排出量が多いのは発電部門で、40%以上を占めている。
したがって、自動車と並行して発電のゼロエミッション化も同時に進めねばならない。
日本の総発電量に占める比率を見ると、原子力発電は福島第一原発事故の影響で約3%に落ちている。その分火力発電が増え、80%を超えている。一方、水力を含む再エネは10%を少し超える程度だ。
しかも、日本は火力発電に占める石炭の比率が大きく、世界から非難を浴びている。2021年11月に開催されたCOP26で、日本は化石賞(Fossil Award)を受賞した。
「電源の問題は政府の仕事」という姿勢はダメ
化石賞とは、温暖化対策に後ろ向きな国に皮肉を込めて与えられる不名誉な賞であり、日本は前回(COP25)に続く2大会連続の受賞となった。
EVの普及だけでCO2の削減は達成されない。EV化は再エネ発電の増加とセットで考える必要がある。
日本において再エネ活用の中心になりうるのは太陽光だ。幸い、太陽光発電は2012年のFIT導入以来順調に伸びてきている。そのお陰で、2030年には水力を加えた再エネ比率は30%を超えそうだが、今我々はこれを何とか40%まで引き上げようと努力しているところだ。
自動車メーカーも、この動きと連動する必要がある。ガソリン車やHVにこだわり続けるのは、経営戦略上不利である以上に、温暖化対策に後ろ向きだと、世界から批判されかねない。
「我々は自動車メーカーであり、電源の問題は政府が考えること」という姿勢ではなく、自ら再エネ発電に乗り出すぐらいの気概を見せてほしい。われわれが彼らから聞きたいのは「EV用の電力は任せてくれ」という強い決意だ。