石原慎太郎氏の「後だしじゃんけん」を意識か

1991年の都知事選では現職の鈴木俊一氏が4選を目指していたが、当時自民党幹事長として辣腕を振るっていた小沢一郎氏がトップダウンで元NHKキャスターの磯村尚徳氏を擁立。これが都民から「独断専行だ」「高齢者いじめだ」などとの批判を招き磯村氏は敗北。小沢氏は幹事長を辞任した。

当時の小沢氏と今の茂木氏を同一視するわけにはいかないが、現段階で馳氏に逆風が吹いていることを考えると、31年前の「東京の乱」とダブってみえてくる。

山野氏の出馬をめぐる展開は、都知事選での別のドラマを想起させる。昨年中に出馬を明言した馳、山田の両氏とは違い、山野氏は出馬への意欲を見せつつも正式な表明は今年1月13日まで引っ張った。「じらした」と言ったほうが正確かもしれない。

最後の最後まで出馬表明をせず、告示が迫ってから表明して話題を独占、選挙でも勝った石原慎太郎氏の「後だしじゃんけん」と言われた手法を意識しているのかもしれない。

保守王国の自民党に、知事選で亀裂が生まれる恐れ

山野氏は2月24日の知事選告示ギリギリまで金沢市長を務め、コロナ対応などにあたる考えだという。昨年3月、千葉市長だった熊谷俊人氏がぎりぎりまで市長を務めて千葉県知事選に転身して圧勝したのは記憶に新しい。いち早く市長を辞任して馳、山田の両氏とともに「主な立候補予定者」として扱われてしまうよりも、県庁所在地の市長としてニュースに露出しているほうが知事選にも有利になる、という目論見がありそうだ。

3月13日の投票日に向けて、石川県は全国で注目を浴び続けることになる。自民党本部としては、勝敗もさることながら保守王国の自民党が知事選によって亀裂が生まれ、4月の参院補選に影響するという展開が最悪のシナリオだ。そうなれば7月の参院選にもマイナス要因となる。政治の世界ではこれまで繰り返し「前哨戦」という言葉が繰り返されてきたが、この春の石川県の選挙は正真正銘、「7月の参院選の前哨戦」となる。

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