知名度では馳氏が圧倒的に優位に見えるのだが…
3者入り乱れる情勢は混沌としている。そもそもこの県では知事選でも国政選挙でも自民党の支援を受けた有力候補が危なげなく当選する展開が多い。「分裂」とか「激戦」には慣れていないのだ。
知名度では馳氏が圧倒的に優位に見えるのだが、自身の出馬を巡ってスタンドプレーも目立ち、反発も招いている。地元の地方議員の大半が支持するのは山田氏だとみられている。そして「第3の男」、山野氏は出遅れはしたが、18日の地元紙・北國新聞の選挙情勢では、最も優位に立っていると報じられた。
今回の知事選は県内の主導権争いにとどまらない。東京の自民党本部も神経をとがらせている。岸田文雄首相や党本部は7月に行われる参院選を最重視している。この先の政治日程をみると、参院選の後は大型の選挙はあまり見当たらない。昨年10月の衆院選で勝った岸田自民党は、参院選でも勝って長期安定政権にしたい。石川県知事選挙、さらに4月の参院石川県補選は「夏の参院選の前哨戦」として注目されるのだ。
石川県政界で今も絶大な力を持つ森喜朗元首相
当初、党本部は、真っ先に手を上げた馳氏支援で県内をまとめて事実上の信任投票に持って行こうという考えだったようだ。馳氏が、石川県政界で今も絶大な力を持つ森喜朗元首相の側近であること、そして永田町のドンになりつつある安倍晋三元首相が率いる安倍派の幹部でもあることが要因だ。
加えて夏の決選を前に無用な体力を使いたくないという思惑もあった。現状の保守分裂はそんな党本部側の思惑と真逆の展開となっている。結果として自民党は今回の知事選で事実上の自主投票となる。
今回の知事選を巡っては、過去、全国で行われた知事選の歴史的なシーンと酷似している点が多い。
自民党の茂木敏充幹事長は昨年11月30日の記者会見で石川県知事選の対応について「これまで基本的に馳氏の出馬を前提に準備を進めていた。これは県連も党本部もその方向だった」と発言した。この段階で馳氏が既に出馬表明していたのは事実だが山田氏も出馬に意欲を見せており、県連の対応は調整中だった。茂木氏の発言は、馳氏支援に誘導しようとした発言と受け止められ、山田氏側は猛反発。多くの県民も違和感を持った。
この展開は、今から約30年前の東京都知事選の時のドラマとそっくりだ。