企業の健全性がわかる「ネットデット」という指標

【宮田】鋭いですね! いわゆる財務分析における安全性分析ですね。流動比率や自己資本比率を見ることで企業の健全性がわかるのと同じです(※)

(※)流動比率は、流動資産÷流動負債で計算される。流動負債に対して流動資産がどのくらいあるかを見る指標であり、1年以内の資金繰りの状況を把握するためのもの。流動比率が高いほど短期的な財務の安全性が高いと言える。自己資本比率は、純資産÷総資産で計算され、総資産のうち、株主に帰属する割合がどのぐらいかを見る指標。自己資本比率が高ければ、負債が少ないということであり、中長期的な財務の健全性が高いと言える。

【中村】いくらキャッシュが多くても借金ばかりだと健全ではないですよね。

【宮田】そう、そこでファイナンス的視点では、「ネットデット(Net Debt)」という指標に注目します。

【中村】初めて聞きました。何ですか? それ。

【宮田】有利子負債からキャッシュを引いた残高のことです。ここで有利子負債とは、借入や社債のように、金利が発生する負債のことを指します。

【中村】たとえば、企業が借金を10億円抱えているとして、キャッシュが手元に3億円あるとしたら、ネットデットは7億円ってことですか。

【宮田】そうです。メルカリは、キャッシュの残高は2020年6月末時点で1357億円。それに対して有利子負債は524億円ほどですね。

【中村】てことは、有利子負債524億円-1357億円でマイナス833億円ですね。つまり……。

【宮田】ネットデットがマイナスということは、実質無借金経営ということになります。すなわち、有利子負債を手元のキャッシュですべて返済しても、なおキャッシュが残るんですよ。家計でたとえると、住宅ローンを5000万円抱えながら、キャッシュを1億円以上持っているような状況です。

いつか返す「預り金」と、近々キャッシュに変わる「未収金」

【中村】赤字が拡大しているのでヤバイと思っていましたが、そんなことないんですね。

【宮田】もちろん懸念すべき点はあります。それは、預り金が840億円もあることです。これはメルカリではなく、ユーザーのお金ですからいつか返す必要があります。

一方で、資産の側には未収金が156億円(※)もあるので、トータルで言うと資金繰りには問題ありません。この未収金は、近々キャッシュに変わることが約束されているからです。

(※)未収金とは、商品以外のものを販売等して、その代金を後日に受け取ることになった場合に使う勘定科目のこと。メルカリのケースでは、メルペイスマート払い(翌月払い・定額払い)により、まだメルカリが受け取っていない代金が多くを占めている。

メルカリの場合、メルペイスマート払い(翌月払い・定額払い(※)から構成されています。

(※)通常、メルペイは前払いで入金したものを使って決済する(プリペイド式)が、メルペイスマート払いは前払いの入金は不要で、メルカリが立て替えた後に決済されるもの(クレジットカードと同じ仕組み)である。

【中村】メルカリならではのビジネスだからか、決算書の内容もだいぶ特殊ですね。