先の3つの点については、地元の情勢を熟知した現地スタッフを抱えているかどうかで、結果が大きく変わってくるだろう。この点で非常に上手くやっている会社として、内蒙古で風力発電事業を行っている英国系のホニトン・エナジー(Honiton Energy Holdings plc)が挙げられる。同社は英国人のポール・エヴァレイ氏と中国の深●(しんせん)で政府の役人をやっていた中国人のジンファン・リー氏が手を組んで興した会社で、エヴァレイ氏が海外での資金調達、リー氏が中国政府との交渉を受け持ち、プロジェクトを推進している。同社は今年内蒙古で49.5メガワットの風力発電所を立ち上げ、7月には、株式の一部をバーレーンのアルキャピタ銀行とインドのタンティ・グループに譲渡した。創業して3年での株式譲渡は、顕著な成功と言えるだろう。一方で同社は、内蒙古でさらなる発電事業を行う許可を取得しているにもかかわらず、中国の送電網が不十分なため、送電網の構築を待たなくてはならないというジレンマも抱えている。
排出権特有の問題としては、CDMプロジェクトは国連のCDM理事会の承認を得なくてはならないが、近年、案件が多くなって承認手続きが遅れたり、自国びいきの理事が、他国の案件に反対しているケースがあるといわれる。
また、中国においては、排出権は原則として中国側に帰属し、たとえ日本企業が金を出してプロジェクトを実施しても、いったんすべて中国側に帰属した排出権を、あらためて中国側から売ってもらわなくてはならない。これは中国政府が排出権を国家財産として扱っているためで、HFCやPFC系プロジェクトであれば、プロジェクトから発生する排出権のうち65パーセントが、N2O系プロジェクトであれば30パーセントが、風力発電やメタンガス回収であれば二パーセントが、それぞれ中国政府のものになると法律で規定されている。残りはプロジェクトを実施した中国企業のものである。日本側パートナーは、中国企業が得た分の排出権を市場価格よりは幾分安く買い取らせてもらうことになるが、どれくらいの量をいくらの価格で買わせてもらえるかは交渉次第だ。
●=土へんに川