地球とサイバー空間はグーグルに支配される

つまり、いまは膨大な数のサイトが、グーグルの大きな手のひらで踊らされているわけだ。アマゾンはみんなの財布を握るのに30年近くかけたのに、グーグルは短期間で近いところまでいける。すなわち、グーグルにクレジットカードを1回登録すれば、検索でヒットしたサイトで予約や買い物ができる、前述のシングル・サインオンだ。Eコマースからレストランやホテル予約まで、AtoZになんでもグーグル上で行うことができるようになる。

そして、グーグルマップを運用するアルファベットは、傘下のウェイモという会社で自動運転技術の研究を進めている。ストリートビューの撮影で世界中の地図をデータ化し、実際に自動運転で撮影してきたのだ。

アルファベットはこれから“検索即購買”のEコマースと、自動運転の2分野でさらに強くなると予想できる。

最後に、マイクロソフトはGAFAMのなかで最も安定している。裏返すと、おもしろみがない。基本的にはウィンドウズとオフィスに代表されるように、デスクトップ・チャンピオンだ。

しかし、ユーザーとの間にポータル的なつながりはない。無味乾燥なビジネスユースであり、近年もワードやエクセルなどの「オフィス365」(現マイクロソフト365)がサブスクリプション・モデル(年額・月額の継続購入モデル)で収益を上げたこと以外に大きな変化はない。スマホでも、iOSとアンドロイドに並ぶOS開発には成功していない。巨大産業であるモビリティ分野にも本格的な参入はしていない。

得意なビジネスシーンには、開発テーマは山のようにあるはずだ。例えばセールスフォース・ドットコムが提供しているCRM(顧客関係管理)などのクラウド・サービスのほか、会計ソフト、電子契約サービスなどは、マイクロソフトが一元的に提供してもおかしくない。あるいは、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を用いた間接業務の効率化ツールも、マイクロソフトがまとめて提供すれば、デスクトップ・コンサルティングとしての役割を担えるだろう。

デスクトップにあるものはすべてカバーできるのに、ユーザー企業の業務に立ち入った形で手を出さないのは不思議だ。リソースはリンクトインのように買収で集めてもいい。無味乾燥なビジネスユースだけになっているのはもったいない。

以上、GAFAMとテスラの経営を一望してみて、最も強みとおもしろみがあるのは、グーグルのアルファベットだ。他社の経営者が“宇宙遊泳”や“現実逃避”をしているなかで、インド出身のCEOサンダー・ピチャイ率いるアルファベットが“次の動き”をしたときには、自動運転と検索を起点として、地球とサイバー空間はグーグルに支配されることになるだろう。

▼『日本の論点 2022~23 なぜ、ニッポンでは真面目に働いても給料が上昇しないのか。』

この本でしか読めない巻頭言と本連載1年分(加筆修正版)を掲載した『日本の論点 2022~23 なぜ、ニッポンでは真面目に働いても給料が上昇しないのか。』(プレジデント社)は21年12月14日(火)発売開始。今年を総括し、2022年以降の日本と世界を考えるための視点や考え方を伝授。

 
(構成=伊田欣司 撮影=的野弘路 写真=時事通信フォト)
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