「彭帥選手問題 異様な国だと再認識せよ」と産経社説
11月23日付の産経新聞の社説は「これを黙って信じろという方が無理だろう。全ての事柄が政権の都合に左右される中国という国の異様性が浮き彫りになるばかりである」と書き出す。見出しも「彭帥選手問題 異様な国だと再認識せよ」である。なるほど言い得て妙だが、いまの中国は「異様さ」そのものである。
産経社説もバッハ会長と彭帥さんとのテレビ電話を取り上げ、こう指摘する。
「通話には中国の李玲蔚IOC委員も加わり、性的暴行の被害については言及すらなかった。来年2月の北京冬季五輪を前に現地入りするバッハ氏は北京での夕食に彭帥さんを招待したという。だが会見場所はIOC本部のあるローザンヌなど、自由に発言できる中国国外でなければ疑念は払拭できない」
性的関係の強要について国際社会は懸念している。そこに触れないIOCは見識が疑われる。
産経社説は「男子テニス世界1位のノバク・ジョコビッチや女子の大坂なおみも彭帥さんを心配する声を上げていた」と指摘するが、バッハ会長がテレビ電話で話せたのは、中国政府の思惑通りにIOCが動いたからではないか。
産経社説は「五輪本番を控えてIOCはこれまでも、新疆ウイグル自治区の人権問題などについても直接的な批判を避けてきた。IOCの弱腰は中国に利用されるだけだ」とも指摘する。
新型コロナの流行拡大の兆しが日本国内で出ているなかで、IOCは東京五輪を決行した。IOCの目的はオリンピックの開催で得られる巨額の富の獲得にある、と言っても過言ではない。習近平政権はそこを十分に理解してIOCを利用したのである。
日本も北京冬季五輪の「外交ボイコット」を検討すべきだ
産経社説は書く。
「米国のサキ大統領報道官が『米国は性的暴行の告発は捜査されるべきだとの立場だ』と強調し、『中国は批判に対する寛容さが全くなく、声を上げる人を黙らせてきた』と非難した。国連人権高等弁務官事務所の報道官は『彼女が訴えた性的暴行についての透明性のある調査を求める』と訴えた」
性的被害なのである。強制捜査にまで踏み込まなくとも透明性のある調査が間違くなく必要だ。
産経社説は最後に日本の対応をこう批判している。
「心もとないのは21日のテレビ番組でこの問題を問われた林芳正外相が『注視をしているが、何か具体的な検討を開始したわけではまだない』と答えたことだ。あいまいな態度は、IOCと同様、中国を利するだけだろう」
外交上、日本の最大の弱点は「ノー」とはっきり言えないことである。林氏はかなりの中国通だ。中国との関係を慮って言葉を濁したのだろうが、産経社説が批判するようにあいまいな態度では強権的な中国・習近平政権になめられるばかりである。アメリカのサキ報道官の物言いをしっかりと学んでほしい。
たとえば、アメリカはバイデン大統領が北京冬季五輪について「外交ボイコット」を検討していることを明らかにしている。11月中にも正式決定される見通しだ。この外交ボイコットは開会式などへの首脳や閣僚らの派遣を見送るもので、選手団は参加する。習近平政権の人権弾圧に抗議するのが狙いである。今回のプロ女子テニス選手の彭帥さんの問題も影響を与えるだろう。
日本は岸田首相が「何も決まっていない。日本の国益などもしっかり考えながら判断する」と述べるにとどまっている。この際、アメリカ外交に学んで北京冬季五輪の外交ボイコットをしっかり検討すべきではないか。検討していることを明らかにするだけでも対中国外交は日本に有利になるはずだ。