「ワンルーム転居は無理です、息子は蔵書がかなりあります」(父親)

私は次の案を提示します。

「では、ご自宅を有効活用するというのはどうでしょう。このままいくと、ご長男が一人でご自宅に住み続けることになってしまいます。一人暮らしならワンルームでも十分ですので、ご自宅を売却して住み替えるのです。ご両親が亡くなった後にご自宅を売却するとよいのですが、難しそうであれば、早めにご長男だけ一人暮らしを始めるとよいでしょう」

「それも難しいと思います。蔵書がかなりありますし……」(父親)
「私たちがいなくなったら、いずれは一人で生活していかなければなりませんが、無理に一人暮らしをさせるのは……かといって、一人で不動産の売買は難しいのではないかと思います。」(母親)

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結局、今の家に住み続けることになると思います、と私の提案は一蹴されてしまいました。

「う~ん。ご相続でご次男に我慢してもらうという方法もあるのですが」

私は遺産分割については、できるだけ均等に分けることをお勧めしています。親亡き後の生活では、働けない子どもの資金状況が心配ですが、生活面での支援などで兄弟姉妹の支援を受けることも多いからです。快く支援をしてもらうためにも、自立できている子供にも配慮が必要です。ただ、どうしても難しい場合は、兄弟姉妹で格差のある遺産分割を検討してもらうこともあります。

「自宅を長男が相続することを考えると、金融資産については2人で均等にわけるようにしたいです」(父親)
「下の子は、親に迷惑をかけないようにと大学も国立に進んでくれました。私たちを安心させてくれていますので、できるだけ不公平にはならないようにしたいです」(母親)

私も両親と同じ意見ですが、こうも次々と提案を否定されると対策が難しくなります。

「そうなると……まあ、とりあえずはご両親が健康で長生きされるのが、ご長男の老後の改善につながりますが」

改善案が尽きた私がふと漏らすと、

「そうですか。長生きするといいんですか」

父親はそう言って顔を上げました。