15分の打ち合せのために首相会見は打ち切られた

【森】2021年1月に二度目の緊急事態宣言に7府県が追加された直後の記者会見で、質問を希望して挙手している記者がいたのに司会者は「(首相は)次の日程がある」と強引に会見を打ち切りました。国民すべてが切実な問題として注目する新型コロナに関する重要な会見を途中で止めなければならないほどに重要な「次の日程」とは何だろう。

森達也・望月衣塑子『ジャーナリズムの役割は空気を壊すこと』(集英社新書)

翌日の首相動静には、その後に15分程度で終わった打ち合わせが記されていました。たった15分。ならば打ち合わせではなくて報告だよね。いくらでも後ろにずらせるはずです。次の日程というエクスキューズを使うために設定しておいたのかと思いたくなる。バカにするなと記者たちは怒るべきです。官邸側に仕切りを任せているからこうしたことが起きてしまう。まずは主導権を記者クラブ側が取り戻さないと。

【望月】今現在、反論を述べない新聞社、あるいは番記者たちにしても、本音では質問できる権利を取り戻したいという人のほうが多いと思うんです。内閣記者会(官邸記者クラブ)の総会を開いて、そういったことを議論すればいいのですが、その総会も設立以降一度も開かれていないと聞きます。

権力に利用される記者クラブのままでいいはずがない

【森】明治時代に記者を締め出そうとした帝国議会に対抗するために、記者クラブは設立されました。最初の理念は間違いではなかった。でもその後に翼賛クラブ化して権力に利用されるようになった。

排他性も問題です。日本以外の多くの国のプレスクラブは、外国人特派員協会がまさしくそうだけど、雑誌やウェブ媒体の記者、フリーランスのジャーナリストの入会が可能です。日本以外にこうした排他的な記者クラブを持つ国は、中央アフリカのガボンとかつてのジンバブエ、あるいはミャンマーくらいだと聞いたことがあります。

民主党政権下では記者クラブ解体の方向が少しだけあったけれど、安倍政権になってからは元通りというか、前よりも締め付けが強くなった。政治権力をしっかりと監視していくために、今の記者クラブの在りかたは一刻も早く変えるべきです。

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