実効性の伴わないイメージ戦略が蔓延

行動が変わっていないのにウェブサイトで自社の活動と17色のSDGsマークを関連付けて表示したり(以下、「SDGsタグ付け」と呼ぶ)、役員や従業員が胸にSDGsのバッジをつけている企業は「SDGsウォッシュ」と言われても反論ができないはずだ。

SDGsウォッシュとは、SDGsに貢献しているように装っているが実態が伴っていない組織や活動について指摘されるものだ。元来は、企業の環境活動に対して指摘する「グリーンウォッシュ」として広く使われてきた用語である。ただし、このSDGsウォッシュには統一された定義がない。そこで、SDGsウォッシュに関して以下の定義を提案したい。

SDGsに取り組んでいると自称している企業や、胸にSDGsバッジをつけている人は以下の2つの質問に答えてみてほしい。

①その活動は2015年9月以降に開始したものですか。
②2015年9月以降に始めた場合、その活動はSDGsがあったから生まれたものですか。

この両方を満たさなければ、SDGsウォッシュと言われる可能性があるだろう。仮に2015年8月以前から行っていた活動であれば、何も行動が変わっていない。SDGsがなくても生まれた活動であればSDGsによる付加価値は何もないはずである。この①②を満たさない活動は、後付けで上塗りした「SDGsタグ付け」なのだ。

自社の活動がこの①②の両方を満たすのであれば、胸を張ってどんどん進めればよい。一方で、もしも①②の条件を満たさないならば、自社のウェブサイトからSDGsマークを外し、役員や従業員からSDGsバッジを回収したほうがよい。

実効性が伴わない環境広報やイメージ戦略はグリーンウォッシュに当たるのだが、不思議なことに近年、SDGsに関してだけはこのコンプライアンス意識が企業から消え去ってしまっている。国やコンサルタントが推進しているからよいのではなく、地球環境問題や社会課題に対する各社の倫理感が問われているのだ。

ただのタグ付けはコンサルタントのビジネスに過ぎない

SDGsが2015年9月の国連持続可能なサミットで採択されてから6年が経った。現在でも「今の活動をSDGsの項目に紐付ければOKです」と言い続ける企業コンサルタントで溢れている。

コンサルタントであれば当然、SDGsの前文を読んでいるはずだが、とてもそうとは思えない人間が多い。筆者がコンサルタントの立場であれば、従来の活動を棚卸ししてタグ付けした後に、「現在白地の分野で新たな活動や新規ビジネスを始めましょう。うまくいけばウェブサイトでSDGsマークをつけましょう」と伝える。これならSDGsによる付加価値が発生し、クライアントの行動変革にもつながるはずだ。

だがそんなコンサルタントに出会うことはまずない。

本当にSDGsが規模や業態を問わずあらゆる企業に関連し、SDGsをまったく知らない企業が一から勉強して世の中に普及させることでビジネスチャンスが広がるのであれば、コンサルタントはクライアントにSDGsの目標へ取り組んでもらったうえで、新規に得られた利益の1%を受け取るなどの成果報酬型にしてはどうだろうか。SDGsを解説したり、タグ付けしただけで報酬を受け取るなんて、筆者ならできない。

SDGsコンサルタントの宿命は、貧困や人権といった社会課題、気候変動や資源枯渇といった地球環境問題が解決に向かえば向かうほど、ビジネスが減ってしまうことだ。つまり、コンサルタントにとっては課題は課題のままで残り続けたほうが都合がよいのである。SDGsコンサルタントはこの自己矛盾に気がついているのだろうか。

コンサルタントにとってSDGsは、社会課題や地球環境問題を解決するための道標でも企業のビジネスチャンスでもなく、コンサルタント自身のビジネスを持続させるためのツールになっているのが現状だ。