私立進学の目安は「毎月8~10万円を捻出できるか」
未知子さんは冗談めかすように、「塾と家庭教師でこの頃は毎月2、30万円は使ってたかな。いまだに怖くて集計できてないんですよー(笑)」と話していました。なかなか金額を言いたがらなかったところを見ると、実際にはもっとつぎ込んでいたのかもしれません。
だとすれば、小学校5年生から中学合格までの約2年の間、住居費と塾・家庭教師代だけで手取り60万円の大半が消えていたことになります。結果的に金城夫婦は貯金を切り崩すようになりました。
そうしてお子さんは無事に大学附属の私立中高一貫校に合格します。私立の場合、家計から毎月8~10万円を教育費として捻出できるかどうかが、ひとつ進学を考える際の目安になってきます。
私自身、年収1000万円、住居費12万円という中で金城夫婦のキャッシュフローを作成した際には、小学校から私立に入れても問題はないだろうと考えていました。しかし実際には幼稚園から住居費が毎月20万円に大幅アップし、お稽古ごとに毎月10万円。さらに小学校高学年の時には塾代と家庭教師代で月30万円を費やしていたのですから、火の車になるのも当然だと思います。
「たった一人の大黒柱」夫の定年でいよいよピンチに
未知子さんもきっとどこかで、今の状況の危うさをうっすら感じていたのだと思います。だからこそ、ずっと私に会いにくかったのでしょう。そんな中で今回、未知子さんが意を決して来てくださったのは来年、夫が65歳で定年を迎えるからでした。
当たり前ですが、アドバイスを守っていただけなかったとしても、決して私は怒りません。その時その時に応じて、できる最善のご提案をするだけです。ただ、大きな金額が動く場合は早めにご相談にきていただけると、選択肢を多く用意することができ、無理のないライフプランを提案できるのかなと思っています。
そういった意味で、たった一人の大黒柱が来年定年を迎える金城さん夫婦の場合、ご提案できる選択肢は非常に少なくなってしまいました。
まずは、住居費を今すぐダウンサイジングしてもらうようにしました。金城さんは持ち家がないため、老後も賃貸を続けることを考えると、これは急務です。ただお子さんの通学があるため今すぐ都心から離れることは難しく、家賃15万円くらいのところになりそうだということでした。
ただ不幸中の幸いにも聡さんには1500万円ほどの退職金が出るそうなので、当座は問題ないと思います。しかし、お子さんが独り立ちするまでまだ10年ほど時間がありますし、妻の未知子さんもまだ54歳です。このままでは老後資金を退職金一本に頼らざるを得ませんが、未知子さんが働きに出て聡さんも再就職できれば、不測の事態にも備えられます。未知子さんには、お金を増やすアクションを今からでも少しずつ考えてほしい、とお願いしました。