プレゼンは攻守がはっきりしている野球みたいなもの

コミュニケーションのテクニックは巷に溢れています。中には「こういうときはこうしろ」的なマニュアルもあります。

間違えたくない、失敗したくない、利益を得たい、思いどおりにしたい……、そんな思いがマニュアルに走らせるのでしょう。もちろん、中には本当に役立つケースもあるのですが、そうしたスキルは「1つの基準」に過ぎません。

冒頭の仕事ができる女性の話に戻りましょう。

彼女が身につけたプレゼンの手法というのはいわば、攻守がはっきりしている野球みたいなもの。攻める側と守る側がきちんと区別されてるわけです。まずは一方的に自分の話をし、相手はそれを聞いてくれるという状況にあります。その後、先方から質疑や意見があって、それに応えていくわけです。

そこでは、いかに自分の意見を自分たちに利があるように伝えていくかがポイントになります。つまり、相手ピッチャーの投げるボールをいかに打ち返すか、そしていかにランナーを進めてホームに返すか、ということを攻撃時では考えればいいのです。

正解やスキルを学ぶ前にまずは自分に自信を

ところが、プライベートのやり取りというのは攻守が目まぐるしく入れ替わるサッカーみたいなもの。攻めていたと思ったら何かのはずみですぐに守りに転じるわけです。

※写真はイメージです。(写真=iStock.com/g-stockstudio)

「先日の買い物で得た戦利品」について話していたと思ったら、ある瞬間には「会社の気になる後輩」について話題が変わっていますし、次にどんな話が出てくるかは誰にも予測できません。

野球の技術は野球では通用しますが、サッカーで使おうと思えばおかしなことになってしまいます。同様に、スキルにこだわってしまうと、仕事をするときは役立つけど、プライベートでは話をしても面白くない人になってしまうのですね。たとえある種のスキルを身につけ、成功したとしても、それに執着しないでください。

ビジネスシーンで身につけたスキルをプライベートでも使おうとしたら、人間関係が疎遠になってしまう場合も考えられます。

また、もともと自分に自信がない人の言葉は、それがどんな前向きな言葉であろうと、やはり相手には自信なさげに伝わるものです。正解やスキルを学ぶ前に、まずは自分に自信を持たせることを優先すべきということは、ご理解いただけるはずです。

スキルはあくまで数ある模範解答の1つ。汎用性の低いテンプレートくらいに思っておくのがコミュニケーションの悩みを深くしないためには大切です。

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