「起きていることは全て正しい」

僕自身、ネガティビティバイアスの影響を受けすぎないようにするために、意識して取り組んだことがある。それは、「振り返り」の時間をしっかりとること。行動の前に、自分の不安な心にたっぷり向き合う。その上で行動に移し、振り返ってみる。

すると、「イメージしていた不安」は、実際には起きないことがほとんどだった。ネガティビティバイアスは、視点を変えると、「準備する力」とも言える。心配性の人が抱えている問題は、心配性なことにあるのではない。予測外の出来事が起きたときに、うまく対応できないことにある。事前に様々なパターンを予測し、準備をする。予測通りにいかなかったときに、現実を受け入れることができないと行動を控えるようになってしまう。僕自身もそんなにうまく動けていたわけではなく、よく憤っていた。

僕が20代の頃、その様子を見ていた、早逝してしまった瀧本哲史さんから、こんなことを言われた。

「『起きていることは全て正しい』と思うことは大切ですよ」

予測外のことを楽しめると、行動が怖くなくなる

そのときは、そんなはずがない、正しくないことを正していくことが大事だ、と思ったけれど、この言葉はいろいろな場面で頭をよぎるようになった。そして、納得がいかない場面では、心の中で「起きていることは全て正しい」と一度、口にするようにした。すると、正しくないと思わせているのは、自分のこだわりでしかないと気づかされた。その状況をすっと受け入れ、次にどうするか、考えることができるようになった。

最近は、瞑想をするので、お坊さんの話を聞く。お坊さんからは、どんなことが起きても「そういうものだ」と一度、心の中で唱えてみるといいとアドバイスを受けた。僕が経験することなど、たいてい誰かがすでに経験している。特別に悲惨な目にあっているわけでもない。人生とはそういうものだ。なのに、なぜか自分だけ都合よくことが進めばと思ってしまっている。

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「そういうものだ」とつぶやくと、目の前のことを受け流せる。僕は「ちょうどいい機会だ」と心の中で唱えることも習慣にしている。起きた出来事を変化のきっかけにしてしまうのだ。

ネガティビティバイアスを使って、不安になることをたくさん想像して、事前の準備はしっかりしておく。そして、本番では「予想外のことが起きるのは正しいこと、そういうものだ」と思い、その瞬間を楽しむようにしている。想像通りにいかないことを楽しめるようになると、行動することが怖くなくなる。