③血糖値が上がることを気に病む必要はない
糖尿病患者はこれまで、高血糖が続くことを極度に恐れてきました。主治医から「血糖値が高いままだと、いずれ合併症でたいへんなことになりますよ」と、さんざん脅かされてきたのですから、それも当然です。
しかし、いまでは医学の進歩によって糖尿病合併症は薬で治せるようになりました。そのため、以前ほど血糖値を気にする必要はなくなりました。血糖値が200mg/dL以上になっても心配はいりません。ただし、「きちんとした治療ができる糖尿病専門医」にかかることが大前提であることは言うまでもありません。
私の患者さんでは、40年以上にわたってインスリンの注射を打っていて、毎日計っている血糖値は200mg/dLどころか400、500ということが月に何度もある、1型糖尿病の90代の男性患者さんがいました。HbA1cは9%前後です。
ところが、どこにも合併症が出ていません。血糖値が200mg/dLを超えるような状態が40年以上続いても、正しい治療を行えば合併症と無縁でいられることをこの患者さんが証明しています。
ただし、「命にかかわる血糖値のボーダーライン」はあります。HbA1cは7.9%以下に抑えましょう。これを超えると、免疫力が低下して感染が起きやすく、縫合不全の可能性もあるため手術ができなくなるリスクが高まります。だからHbA1cが8.0%を超えないように血糖値をコントロールすることは必要です。しかし、それができていれば、血糖値に一喜一憂する必要はありません。
④きちんとした治療を受ければ、人工透析と無縁でいられる
実は、糖尿病そのもので死ぬことはありません。糖尿病が恐ろしいのは、さまざまな合併症を引き起こすからです。合併症には腎症、網膜症、神経障害の3つがありますが、その中でももっともやっかいなのは腎症です。
網膜症で失明することは避けたい。しかし、失明で命を落とすことはありません。神経障害も不便ですが、血糖値コントロールをすれば改善できます。
一方、腎臓はあらゆる老廃物を濾過する重要臓器であり、腎臓が動かなくなれば体内に毒素が溜まって死に至ります。そのため腎症が進行すると、人工透析が必要になります。腎臓に代わって機械に老廃物を濾過してもらうのです。
機械で濾過できる老廃物は正常な腎臓の1~2割にすぎず、人工透析を行っている患者さんは疲れやすく、顔色も悪くなります。また、人工透析は1回の治療に4時間程度かかり、週に複数回、それが一生続きます。
しかし、糖尿病専門医にかかり「きちんとした治療」、すなわち、血糖値を下げることではなく、腎臓の合併症を治す治療を受ければ、生涯人工透析と無縁でいられます。