「逮捕されてみたい」慈善団体に届いた104歳女性の願い事

圧巻なのは慈善団体「アライブ・アクティビティーズ」の「Wishing Washing Line(ウィッシング・ウォッシング・ライン)」というプロジェクトだ。イギリス西部、ブリストルの町で実施された。ある日、地元のスーパーマーケットに一つの箱が設置された。この箱には、高齢者なら誰でも願い事を書いて投函できる。締切日を過ぎると、箱から出された願い事リストが、店内の洗濯物干し用ロープにズラリと吊るされるのだ。けっこう壮観ではないか。これだけでもかなりユニークだが、リストを見た買い物客らが、願い事をかなえてあげようと協力するというのだ。

プロジェクトは最初、イギリスのエセックスで行われたが、「高齢者の願いをかなえた」と評判になり、このたびはブリストルに場を移して実施された。今回、多くの願い事の中から取り上げられたのは、104歳のアン・ブロークンブロウさんの「逮捕されてみたい」という希望だった。

写真=iStock.com/Raylipscombe
※写真はイメージです

認知症の彼女は警察にはっきりと返事した

彼女はブリストルの老人ホーム、ストークリーレジデンシャルホームに長く暮らしている。願い事に目を留めた地元警察が立ち上がり、彼女の逮捕に向かった。数人の警官はアンさんに向かい合うと、「あなたを逮捕します。あなたは104年間、善良な市民でした。それが、容疑です」と話しかけた。認知症を患っていたアンさんだが、この時ばかりははっきりと「わかりました」と返事をしたという。すると警官は彼女に手錠をかけ、パトカーへ連行した。

たちまちパトカーは赤いランプを点滅させサイレンを音高く鳴らした。アンさんを乗せると、周囲を軽くドライブしたという。アンさんは104歳の初体験に興奮気味で、「とてもすてきだったわ。ちゃんと手錠もかけられたのよ。私はこれまで犯罪などに手を染めたことはなかったけれど、今日は犯罪者の気持ちをたっぷりと味わいました。警察官たちはとても親切でしたけれど、それでも逮捕は逮捕という厳しさを持って私に向かい合ったわ。それが最高でした。これまでまじめな人生を送ってきたけれど、今日はまったく違う一日で、なんてエキサイティングだったでしょう」と話している。