少子高齢化の大波が寄せ、国民の貧富の格差は広がるばかり

「足元の危うさ」。それは習近平総書記も分かっているはずだ。アメリカとの関係は悪化するばかりで、IT産業に欠かせない半導体の輸入も滞っている。日本など周辺国との摩擦も大きい。ヨーロッパでも中国を批判する国は多くなっている。内政的には一人っ子政策の失敗の結果、少子高齢化の大波が寄せているし、国民の貧富の格差も広がるばかりだ。

元凶は戦狼外交にある。習近平氏はこの外交戦術を捨て去り、軸足を内政に移して諸問題の解決に力を尽くすべきである。

朝日社説は「この100年間には、大躍進運動、文化大革命、天安門事件など、多大な不幸や流血を生んだ共産党支配の過ちがあった。その痛ましい過去が再び繰り返されない保証はない」と指摘したうえで、こう主張する。

「中国が今後の持続可能な発展のために実践すべきは、棚上げされた政治改革である。現在の豊かさを築いた『改革開放』の柔軟な発想を、経済から政治にも広げる必要がある」

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いまこそ柔軟な発想を経済から政治へと広げるべき

沙鴎一歩は社会主義体制に行き詰まってソ連が崩壊したとき、中国共産党も同じ運命をたどると考えた。しかし、中国は経済力を立て直してアメリカに次ぐ世界第2位の経済大国にのし上がった。なぜなのか。

たとえば、社会主義と自由経済をうまく同居させた香港の一国二制度の成功である。それは中国本土にも応用され、一党独裁体制のなかで見事なまでに経済力を伸ばした。中国共産党に柔軟さがあったからだろう。

しかし、いまの習近平政権は違う。世界的な金融市場として活気の溢れた香港からも自由を奪ってしまった。柔軟さの欠片もない。朝日社説が主張するように、いまこそ柔軟な発想を経済から政治へと広げるべきである。

朝日社説は後半部分で「平和的な権力移行の仕組みを崩し、香港や新疆で弾圧し、ことさら外国の脅威をあおる。その遠景には列強から屈辱を受けた近代史があるとはいえ、今ほど強大化した中国が内向きな強権政治に走るのは危うい」とも指摘する。その通りだ。