これからの電動化は、裾野を広げることが重要

乗り物の電動化は、この先、もっと大きな波になる。これまで何度もブームが来ては収束していったが、今回は各国での優遇税制が牽引役となり、さらに各社が魅力的な電動化車両を出し続けていることなどを追い風に主流になることは間違いない。

ただし、その大前提としてEVのみでその波は作れないし、継続しない。これからの電動化は、裾野を広げることが重要である。

その意味で筆者が注目しているのが燃料電池車(FCV)だ。2014年12月に販売が始まった、トヨタの世界初の量産型FCV「初代MIRAI」は、日本・欧州・北米市場を中心に約6年間で約1万1000台が販売された。

そして日本では2020年12月9日に2代目となる新型MIRAIが発売した。執筆時点(2021年6月25日)での車両価格は710万円~(「G」グレードの価格)だが、エコカー減税[100%]+環境性能割[3%]+グリーン化特例[概ね75%]+CEV補助金(クリーンエネルギー自動車導入事業費補助金)であれば約139万5700円の優遇が受けられる。

なお、エコカー減税[100%]+環境性能割[3%]+グリーン化特例[概ね75%]+令和2年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金の場合は優遇額が増え、約162万5700円となる。

MIRAIに高度運転支援技術が搭載された

さらに2021年4月8日には、将来の自動運転社会に向けた高度運転支援技術である「Advanced Drive」がMIRAIに搭載された。こちらは845万円~(「Z“Advanced Drive”」の価格)。非搭載車とグレードを合わせれば、Advanced Drive分の差額は55万円だ(価格はいずれも税込み)。

写真=iStock.com/zahar2000
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Advanced Driveは現時点、自動化レベル2の段階(運転支援車)だが、ハードウェア(機械)とソフトウェア(システム)のアップデート(更新作業)によってレベル3(条件付自動運転車)へ進化することがトヨタから公表されている。

レベル3は、2021年3月5日に発売されたHonda SENSING Eliteを搭載のホンダ「レジェンド」が世界初の市販車である。このレベル3の定義は国連の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)での決定を受けたものであることから、システムの稼働条件や構成要件に違いはない。ただ、安全性能を重視したホンダは独自基準としてレベル3を稼働させる上限速度を規定の60km/hから50km/hへと下げている。

その点、トヨタのアップデートで対応するレベル3の上限速度がどうなるのか。筆者の予想であるが、これまでの先進安全技術の開発スピードやその内容からして、おそらく上限である60km/hまで稼働させてくるだろう。

筆者はこのMIRAIを、「世界一実用的な自動化レベル3技術を搭載する燃料電池車」であると考えている。その理由は以下の3つだ。