マンションが売れてもローン残債が残る状態
さらに「新築物件」という点にも、落とし穴がありました。皆さんは「新築プレミアム」をご存知でしょうか。新築プレミアムとは、相場価格にプラスされる「新築物件を完成させるまでにかかった費用」のことを指します。
新築物件では建築費はじめ、モデルルームの費用や広告宣伝費といった「物件を建てて売るまでにかかったあらゆるコスト」をもとにして販売価格が設定されます。これは、市場の需給から価格が決まる中古物件とは値段設定の仕方が根本から異なるものです。
その上で丸山さんが買った物件を見てみましょう。彼らが買った新築マンションは6000万でしたが、同じような条件の物件の市場価格は4800万円ほどでした。購入してから2年ほどしか経っていないので、極端に値下がりするのは考えづらいとなると、差額の1200万円分のほとんどが新築プレミアムにあたると予想されます。
これが厄介なのは、丸山さん元夫婦が離婚を機にマンションを売ろうとしても4800万円でしか売れないため、ローンの残債が2人に残ってしまうということなのです。
家賃5万円のアパートに住みながら、月10万5000円のローンを返済
金融業界ではこのような状況をオーバーローンといいます。反対に、ローンの残債より高く物件が売れることをアンダーローンといい、利益がでれば2人で折半して後腐れなくお別れできたことでしょう。たとえオーバーローンでも、互いに貯金が1000万円ずつでもあればローン返済も可能でしたが、2人に貯蓄はほとんどありませんでした。
そんな丸山元夫妻は現在どうしているか。離婚したものの、家については離婚時に決着がつかず、航平さんは家賃5万円のアパートに引っ越して毎月10万5000円のローンを返済し続けており、元妻はそのままマンションに暮らしてローンを払っています。
そもそも名義人である夫が住まないのは規約違反となるため、良くない方法ではあるのですが……。
とはいえ、元妻はマンションに暮らせているだけいいかもしれませんが、ペアローンは互いが連帯保証人になっている点も、この状況では非常に危ない。だって、自分は安アパートに暮らして、離婚した元妻が住む新築マンションのローンを払うモチベーションって……。航平さんの立場になったら相当キツいことがわかると思います。もし航平さんに新しいパートナーができて返済が滞った場合、元妻がその責任を負うかたちになるので、彼女も気が気でないはずです。そして元妻も払えなくなると、家は差し押さえられることになるのです……。