批判多数でも政府・自民党がカジノ誘致を続けるワケ

県の事業者公募には2社が応じたが、5月に1社がコロナなどを理由に撤退し、クレアベストのみとなっていた。クレアベストはトロントに本社があるIR投資会社で、北米を中心にカジノやリゾート開発などを手掛けている。同社提案は国際会議場や展示場、レストラン、宿泊施設、カジノ施設など約56.9万平方メートルからなり、初期投資額は約4700億円。開業4年目の経済波及効果は約2600億円を見込んでいるという。

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仁坂知事は「自信を持って次のステップにいける」と評価しているが、「入札企業が1社しか残らなかったなかで、断念という選択肢もあったはず。こうなるとクレアベスト社の言いなりになって和歌山県は事業費の持ち出しなどを迫られかねない」との声も政府内では漏れる。

菅氏のお膝元である横浜市でもIRの選定はまだ続いている。有力視されていたラスベガス・サンズが撤退したが、まだ2社が残る。その一つであるゲンティンを代表とするグループは、大林組、鹿島、セガサミーホールディングス、ALSOK、竹中工務店の5社が構成員として参加する。このうちセガサミーの創業者である里見治会長と菅氏をはじめとする自民党首脳との蜜月ぶりは有名だ。

「全国旅行業協会会長」を30年近く務める二階氏の存在感

8月には林文子横浜市長が任期満了を迎えるが、同市へのIR誘致を巡っては地元から住民投票を求める声が上がったり、候補地の横浜ふ頭の関係者も市長選で反対派の候補の擁立に動いたりするなど、対立が深まっている。それでも菅氏ら政府・自民党がIR事業を続けるのは「つながりの深い旅行・観光業界への支援だ」と指摘する声は自民党内からも多い。

かつて運輸大臣を務め、支持母体である全国旅行業協会の会長を30年近く務めるなど運輸や旅行業界に隠然たる影響力を持つ二階氏と、その二階氏が実質的に擁立した菅政権。それにすがる旅行業界の構図はかねてから指摘されてきた。

しかし、そもそもJTBやKNT-CTホールディングスなど、「各旅行業者がコロナ感染前までにすべき構造改革を放置してきたことが一気に膿となって出てきた」という指摘は市場から多く聞かれる。