ネット対応の遅れで、旅行大手はコロナ前から低空飛行だった

JTBはコロナ前の19年3月期の連結決算でも151億円の赤字(前の期は10億円の黒字)を出した。リーマン・ショック後の消費不振などで赤字となった10年3月期以来9年ぶりで、当時として赤字幅は過去最大だ。

頭打ちの国内事業を補うためにブラジルやアジアの旅行会社を相次いで買収したが軌道に乗せられず減損を迫られた。さらに実店舗からネット販売への転換に必要なITシステムを導入したが、その移行作業に伴う損失も加わり、合計で132億円の特別損失を計上したのが響いた。

18年3月期は何とか10億円の黒字を堅持したが、長く「低空飛行」が続いている。主戦場が「海外・ネット」になるなかで、JTBなど旅行業界の構造改革が遅れているのは周知の事実だ。これにコロナが加わり、一気に過去の不作為によるダメージが顕在化した。

親会社である鉄道会社が「見切り」をつける恐れ

今や国内の旅行業界が生き残るためには政権頼みしかないのか。もう20年近く前の話になるが、2001年にKNT-CTホールディングスの前身である当時業界2位の近畿日本ツーリストと、同3位の日本旅行が経営統合を発表したことがあった。主導したのは両社の親会社である近畿日本鉄道とJR西日本だった。しかし、その統合は頓挫した。

両社は「統合発表後に起きた米国多発テロによる混乱」を統合中止の表向きの理由にしていたが、実際は経営統合後の主導権争いなどが起こり、関係がこじれたためだ。

JTBが頼る大株主のJR東日本やJR東海、今回は増資に応じたもののKNT-CTホールディングスの親会社である近鉄もコロナによる影響で空前の赤字となっている。JTBなど旅行各社の自助努力が停滞するようだと、親会社である鉄道会社が「見切り」をつけて、また大なたを振るう可能性が日増しに高まっている。果たしてそれまでに旅行各社は生き残りを自ら見出せるか、現経営陣に問われている。

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