「お金を稼ぎすぎないようにしましょう」

みんな、働くのは生活するお金を得るためですよね。だれだって低収入よりも、高収入のほうがいいに決まっています。しかし、お金を稼ぐことに心血を注いでも、幸せになれるかどうかは、ちょっと別の話なんです。ノーベル経済学賞を受賞した心理学者が、おもしろい研究結果を発表しています。

ひろゆき『ラクしてうまくいく生き方』(きずな出版)

世論調査企業ギャラップ(Gallup)が2008~09年に実施したアメリカ国民45万人分の「健康と福祉に関する調査」を分析して、「人生の評価」と「主観的な幸福感」について調べてみました。

すると、「人生の評価」は年収と比例する一方で、「主観的な幸福感」は年収7万5000ドル(発表当時レート換算で約630万円)までは収入に比例して増えるのに対し、その額をこえてからは、関係なくなったそうです。

つまり、年収と幸せが比例しなくなるんです。僕は、いまの日本に当てはめると、手取り年収400万~450万円くらいが幸福と収入が比例しなくなる分岐点なんじゃないかと考えています。そのぐらいになると、それ以上がんばって働いても、それに見合うような収入アップにつながらないし、幸福度も変わらなくなるんじゃないでしょうか。

それに昔と違って「お金があるからこそできること」は意外と少ないんです。せいぜい値段の高いものを食べるとかでしょうか。でも、ファミレスのサイゼリヤの10倍のお金を払って食べる料理が、サイゼリヤの10倍おいしいなんてことは、滅多にないはずです。

ある程度稼げるようになったら、体に鞭を打ってしゃかりきに働くよりも、無理にお金を求めないほうが、余裕を持って生きられると思います

「自分の『維持費』を引き下げましょう」

自分でお金を稼ぐようになると、「もっと高いスーツを買ってみよう」とか「いま乗っている車を新型のものに変えよう」とする人がけっこういます。昔からこれをすごく不思議に思っているのですが、なぜ、入ってくるお金が増えたからといって、出て行くお金まで増やしちゃうのでしょうか?

僕はたぶん、いまこの本を読んでくれている読者の方よりも、お金を稼いでいると思います。でも、貧乏な学生時代と、そんなに生活は変わっていません。

たとえば、洋服は学生時代から友達が着なくなったのをもらって着ていました。いまも当時から持っている服に、バーゲンで投げ売りされているものを少しだけ買い足す、みたいな感じです。外食や買い食いもほとんどしません。飲みものも、水筒すいとうにお茶を入れて持っていったりするので、自動販売機で水とか買っている人を見ると、「すごいなぁ……」と感心してしまうんですね。

でも、そんな生活をしていて、「不幸だな」と思ったことはないです。いまは格安の月額料金でいろいろな映画やドラマを楽しめるネットフリックスとかがあるので、エンタメにもお金を使わなくなりました。

大事なのは、自分の維持費、要は生活水準を上げないことだと思います。というのも、お金を稼げるようになって、生活水準を上げてしまった友人がいるのですが、その人はその後、稼げなくなっても、一度上げた生活水準を下げることができなかったんです。最終的に生活保護を受けるまでになりました。

自分が幸せを感じられる生活水準がどれくらいか。お金がなくても楽しんでいた学生時代を思い出してみて、見直してみてはいかがでしょうか。