連邦制と民主化の合体こそミャンマーが進むべき道

第二に、ミャンマーの真の民主化の定着を日本のODAが助けてきたのか、検証が必要だろう。

今回の騒乱の中で、昨年の選挙で当選した議員たちが国軍の迫害を逃れながらバーチャル空間に国民統一政府(NUG)を立ち上げた。そして本格的な連邦制を導入する新憲法の設置を目指すことを表明し、市民勢力や少数民族勢力から熱烈な歓迎を受けた。この流れの中で、数多くのビルマ人系の組織等から、ロヒンギャ迫害の際に沈黙していたことを悔いる声明などが相次いで出されたことも注目に値する。

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ミャンマー中部シャン高原にあるインレー湖の船置き場 ※写真はイメージです

ミャンマーの紛争の構造を考えれば、平和構築の道筋が、この方向性にあることは確かだ。NUGが掲げる連邦制のビジョンは、あらためて必要不可欠な平和構築の方向性を模索する決意表明であるといってよい。「連邦制」の目標が、「民主化」勢力によって掲げられていることの意味は大きい。「連邦制」と「民主化」の強固な合体こそが、ミャンマーが進むべき道である。

民主化勢力が描く正しい道筋を支援すべきだ

連邦制の考え方自体は建国時から存在していた。それが「ビルマ建国の父」として敬愛されたアウンサンの暗殺と、その後の国軍による権力掌握によって、立ち消えになってしまっただけなのだ。国軍支配下で、民主化が進んでいたはずの2010年代ですら、中央政府と少数民族勢力との間には不協和音が絶えなかった。NUGは、ミャンマーの未来にとって正しいビジョンを打ち出している。

日本のODAは、こうした正しい道筋を支援するものであるべきだ。ビルマ人が多数派の大都市を結ぶヤンゴン・マンダレー鉄道の建設、ヤンゴン都市圏浄水整備、日本企業が多数参加するヤンゴン郊外のティラワ経済特別区開発・関連インフラ整備などは「民主化と連邦制を合体させた平和構築」のビジョンから見れば、関連度が薄い。初等教育カリキュラム改善事業などについても、「国際的な援助の潮流に合わせて」「ミャンマー政府の主導で」行うことに邁進まいしんするあまり、少数民族地域の教育の底上げという課題を軽視するものになっていなかったかどうか、検証すべきだ。