アメリカも欧州も、青天井で個人と企業を支えている
【田原】でも、財政事情が必ずしも日本よりよいとはいえそうにない国でも、ドカンとカネを出している。ようするに彼らは「これは有事だ。戦争と同じだ」と。「有事を放っておいたら国がつぶれてしまう。いまは財政の健全性なんて考えているときじゃない」と対応した。
日本は戦後、戦争をやらず、有事が起こらないことを大前提として生きてきた。有事の発想がないから、有事には平時のルールを破ってもよいのだという考えもない。ルールはルールで、いつだって守らなければならない、とこうなるわけね。
日本以外の国は、緊急事態に違反した場合の罰則規定がある。日本だけがありません。なんで罰則規定がないんだと安倍さんに聞いたら、「田原さん、罰則規定なんか作ったら政権がもちません」といった。つまり、国民のなかにも、やっぱり有事という発想がないんです。
【藤井】しかしながら、もし2020年4月の段階で、安倍さんが徹底的な政府補償を提供することができ、「緊急事態です。徹底的に自粛してください。そのかわり毎月20万円を配ります。毎月必ず払います」といったとしたら、国民はほとんど何の文句もいわずに自粛したでしょう。実際、ヨーロッパの国ぐにもアメリカも、それに近いことをしています。
日本だけがやっている“真逆”の政策
【藤井】諸外国のコロナ不況対策をご覧ください。
EU各国は2020年3月末までに事実上「財政規律の凍結」を宣言しました。いわば、僕の「提言」をコロナ禍が始まった瞬間に実現させているんです。そもそもEUは、域内各国に財政赤字をGDPの3%以内に抑えるよう義務づけ、きりきり遵守を求めていたんですが、これを停止。財政規律を棚上げにして、企業や個人への支援や新型コロナ感染対策などを、青天井で実施できるようにしました。
先進国も開発途上国も、多くの国が消費税の減税を断行しています。しかも2020年4月や5月から始めています。日本では、各国はこうしているという報道すら見かけませんでした。いったいマスコミは何をやっているんだ、と思いましたね。
【田原】日本とは、まったく逆なんだ。
【藤井】逆です。日本では同じ時期、麻生太郎財務大臣がプライマリーバランス規律に関する国会答弁で、驚くべきことに「堅持する」と断言したんです。このときの目標は、2025年度のプライマリーバランス黒字化です。
これを堅持する以上、仮に緊急事態宣言の期間限定とはいえ、毎月20万円なんて到底、支払うことができない。10万円を1回出せばそれっきり。カネを払えなければ、経済は回復しない。