しかし、ここのところのコロナ禍で、切実な理由での自殺者が増えています。社会には様々な受け皿があることが人々に浸透することを望んでやみません。

ミスを共有し、仕組みを作れば生産性は上がる

「注意してください」といった精神論ではミスはなくなりません。

剣道の達人ならまだしも、オフィスで仕事をしている人たちは、精神に頼ってもうまくいきません。『ミスしない大百科』を一緒に執筆し、認知科学や脳科学に詳しい宇都出雅己さんは「『注意』の数には限界がある」と言っていましたが、うまい表現だと思います。

正しい方法は、一度失敗したら、それをなくすための仕組みをつくること。仕組みにすることで、ミスがなくなって世の中の平均値が上がります。たとえば、あなたが会社の中でミスをなくす仕組みをみんなに共有したら、会社の生産性は上がるかもしれません。

飯野謙次、宇都出雅巳『ミスしない大百科 仕事は速くてもミスがなくなる科学的な方法』(SBクリエイティブ)

今、テクノロジーの進化とともに、ミスを防ぐための方法も研究されてきています。たとえば、ウェブサイト上のボタン。「何歳以下はこのボタンを押してはいけない」というときに、以前はボタンの近くに注意書きを表示するだけだったものが、最初からボタンを押してはいけない人にはボタン自体が出てこないようにするなど、ミスが起こり得ない仕組みをつくっています。

時代に応じて、そのときにできることは変わります。今あるツールをうまく使えば、新しい機能をつくることもできます。限度はありますが、今後テクノロジーが発展していけばミスというものが姿を変えていくでしょう。

私たちが、自分の注意力不足が原因と考えるうっかりミスが姿を消し、今までなかった新たなミスに悩まされるようになるのです。それが今のデジタル革命の醍醐味です。

機械はまだ人間の動作に追いついていないことも多く、機械がミスをゼロにしてくれる時代になるまで、まだ時間がかかりそうです。現状でできることを考えながらミスを防いでいきたいものです。

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