ミスしない仕組みをつくる

では、どうしたらよいのでしょうか?

ミスをなくすために必要なのは、その原因をつかんで、ミスしない仕組みをつくることです。

私が仕事をしていたスタンフォード大学でのお話をします。海外で仕事をされた方は経験があると思いますが、日本人は、アメリカ人の悪いところとして、「謝らない」とよく言います。

日本人は仕事で失敗するとすぐ謝ります。「ごめんなさい」「申し訳ありませんでした」とすぐに口にしがちです。でも、アメリカ人はまず謝らないのです。

謝らないかわりに「こんなことになりました」「あんなことになりました」と説明し、次に「じゃあどうしようか」というふうにすぐに解決策に思考が進みます。そもそも謝ったところで、問題解決にはつながらないでしょう。

アメリカでは、その人の「人格」と「仕事」が切り離されているのだと思います。

モダンなオフィスにて仕事に取り組むチーム
写真=iStock.com/recep-bg
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たとえば、マネージャーのブラウンさんがいたとします。アメリカの人の多くは、「ブラウンさんという人が、たまたまマネージャーという職をこなしている」とそういうふうにとらえます。ブラウンさんそのものと、仕事をしているときのブラウンさんとは、何か人格が別のようなとらえ方をするのです。

したがって、その人間としての失敗ではないから謝らない。ミスしたら、「今後、どうしたらミスをしないようになるか一緒に考えましょう」というふうに思考が働くのです。

ミスを「個人の責任」で終わらせてはいけない

日本は子どものときからのしつけのせいか、平均的に「ごめんなさい」と言うことが多いように思います。そして「人格」と「仕事」を結びつけがちです。だからこそ、個人の責任が追及されやすいですし、ミスした人はそのミスを引っ張りがちなところがあります。

アメリカのようにすぐ頭を切り替えて「ミスしない仕組み」を考えるほうが心理的にも楽でしょう。最近、心配なのは、ちょっとしたミスをして落ち込む方が結構多いということです。

先日、韓国のテレビ局の方から「自殺」をテーマにした番組の中で「失敗学」の取材をされました。韓国はOECD諸国の中で一番自殺が多いのです*1。日本では、幸いなことに減ってきていますが、それでも先進国の中では多いほうで、OECDの中で5番目に自殺が多い国になっています。

日本も韓国も社会的なプレッシャーが高く、何かミスをすると、「自分は人間として駄目だ」と落ち込んでしまう方も多いようです。しかし、そうした考えを早く捨てて、自分自身と自分の職業を切り離して考えられるようにしたほうが、ストレスもなくなりますし、気楽にできる分ミスも減るでしょう。たとえミスをしても、ミスをなくすためのもっとよい方法が出てくるのではないかと思います。