リスクを嫌う日系、プロフェッショナル経営の外資

「この先もコロナでさらに景気が悪化したら立ちいかない」「もし、金利が高騰したらどうしよう」など、リスク要因を挙げていけばキリがない。景気リスク、価格変動リスク、為替リスク、地震や自然災害のリスク、クレジットリスク、カントリーリスク、流動性リスク、税務リスクなどなど。釈迦に説法であるが、投資や開発において、リターンがあるということは、当然それ相応のリスクもあるということだ。リスクとリターンを認識した上で最善策を決断するのがプロフェショナルな投資行動だ。

日本の機関投資家や日本の上場事業会社といった多くの日系企業は、相場が下落すると一斉に損切り、景気が下向くと一斉に計画を中止し、思考停止してしまう、リスク回避志向のサラリーマン経営を好む。一方、海外の投資家やファンド、事業会社といった外資系企業は株価の向上と収益の確保を目的とし、ビジネスライクにリスクを取りながら最大限のリターンのためプロフェショナル経営に徹する。

そうした投資家や企業にとって、相場の下落局面や不景気は、絶好の買い場であり、開発を進めるチャンスだ。決断力(権限移譲と相応の報酬と責任)と資金力にも裏付けされており、外資と日本との経営思考や組織の差異が如実に表れている。

「日系なら地元を大切にする」とは限らない

「でも、外資は冷たい、冷酷じゃないか」という反論も多い。そうかもしれない。

しかし、例えば、地域経済への還元という意味では、「外国資本」も「日本資本」もあまり変わらないのかもしれない。

いや、むしろ、海外資本の方が、ESG投資やSDGs経営の実践に示されるように、景観など自然環境や地元への還元、ダイバーシティなど多様性のある社会の実現により理解があったりする。概して、ビジネスライクで、合理的ではあるが、ロジカルであったりもするのだ。

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例えば、先ほどのニセコにおいて、以前の日系ホテルのレストランでは、コスト優先でニセコ外の食材を使う傾向があったが、外資系ホテルに代わってからは、地元食材を使ってくれるようになって新たに雇用も生まれたという。長期的関係を重視する姿勢もニセコにおける外資系の開発計画にはみられる。老朽化したリフトを一新したり、新たにスキーコースを設けたりと設備更新にも積極的だ。

少なくともニセコの歴史を振り返ってみる限り、早々と事業を撤退したり縮小させた日系資本の方が、むしろ、短期的でビジネスライクだったといえる。