日本のビルが次々と外資に買われている。この流れにリスクはないのか。金融アナリストの高橋克英氏は「陰謀論や嫌悪感には根拠がない。日本企業がうまく活用できないのならば、外資に手を入れてもらったほうがいい。ニセコの復活はその象徴例だ」という――。
東京、日本の街並み
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安全・安定・割安なニッポン

日本のビルが外資に買われている。1990年代バブル崩壊や2008年のリーマン・ショック後のデジャブのようだ。日本企業の短期的経営と逆張り不在経営による不動産放出が続く一方、世界的な混乱と金融緩和のなか、安全で安定、そして何より割安なニッポンが、外資系企業やファンドを引きつけているのだ。

つまり、日系企業にとっては、「コロナで大変でリストラに撤退」だが、外資系にとっては、「千載一遇の買い場到来」なのだ。

一方で、「日本のビルが外国資本に買い占められる」と懸念の声も上がる。実際はどうなのだろうか。「外資が冷酷なら、日系は残酷」ともいえる実態もある。現在の状況を整理するとともに、ニセコの事例を紹介しよう。

神戸北野ホテル、エイベックス本社ビルも外資に

日本の企業が、コロナ禍による業績悪化や先行き不透明を理由に、本社ビル、ホテルなど保有不動産を外資に売却する動きが続いている。

今年3月、コロナ禍で鉄道やホテルが不振の近鉄グループホールディングスは、都ホテル京都八条やホテル近鉄ユニバーサル・シティ、神戸北野ホテルなど8つのホテルを米国の大手投資ファンドのブラックストーン・グループに売却すると発表した。8つのホテルの売却額は非公表ながら簿価423億円(昨年3月末)を上回るとみられる。

コロナ禍で主力のライブ事業などが低迷するエイベックスは、昨年末、3年前に開業したばかりの東京・南青山にある地上18階建ての本社「エイベックスビル」を719億円で売却した。譲渡先は非公表ながら、日本経済新聞などの報道によると、カナダの大手不動産ファンドベントール・グリーンオーク(BGO)だという。同じくBGOは、今年3月には、三菱地所から名古屋の大型オフィスビル「広小路クロスタワー」を400億円規模で買収したと報道されている。

これら外資系ファンドは、買収後、リニューアルなどで各物件の価値を上げて集客力や収益性を高め、最終的には、より高値で売却することでキャピタルゲインを狙うことになる。

実際、大手不動産サービス会社のジョーンズラングラサール(JLL)のレポート「Global Real Estate Perspective February 2021」によれば、2020年の首都圏へのオフィスやホテルなど不動産投資額は、約2兆4千億円となり、パリ、ロンドンに次ぐ、世界3位だったという。日本全体の投資額(約4兆6千億円)のうち、海外投資家比率は34%に上り、リーマン・ショック前の2007年以来の高水準となっているのだ。