コロナ禍でも企業の採用意欲は根強い

厚生労働省と文部科学省による「令和2年度大学等卒業予定者の就職内定状況(2月1日現在)」においても、2月1日時点での大学生の就職内定率は89.5%(前年同期比2.8ポイント低下)となった。5年ぶりに90%を割ったとセンセーショナルに報じられたが、リーマンショック後は70%台後半だったことを考えると、まだ当時ほどは悪化していないと言える。

12月1日時点では82.2%で前年同期比4.9ポイント低下だったことを考えると、対前年分のダウン分が解消されてきているともいえる。新型コロナウイルスショックにより求人が減少しただけでなく、学生、企業ともに以前のように自由に活動できなかったこと、緊急事態宣言もあり就活・採用の例年のピーク期が後ろにずれたことも影響していると考えられる。

なお、この調査は62校の大学に対して所定の調査対象学生を抽出した後、電話・面接等の方法により、性別、就職希望の有無、内定状況等の調査を実施するものである。国公立大学が約4割を占め、大学全体の実態よりも高く出る傾向があることを覚えておこう。

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就職情報会社各社が予想する採用動向調査でも2021年卒と比較して、2022年卒は採用数が減少傾向ではあるが、完全に採用環境が悪化したとも言い切れない。リクルートワークス研究所の「採用見通し調査(新卒:2022年卒)によると、大学・大学院卒採用は「減る」11.6%の一方で「増える」も7.7%。「わからない」企業も19.7%→26.1%と増加している。若者が減っていくこともあり、根強い採用意欲の強さを感じる。

ITに強い学生は業界問わず引く手あまた

もっとも、新型コロナウイルスショックの影響が大きい業界では、採用活動を凍結したり、採用数を大幅に減らす動きがあるのは昨年度と同様だ。航空会社、鉄道会社、旅行代理店、宿泊施設などがそうだ。これらの業界は学生にとって長年人気業界であり続けてきた。現在の就活生は、訪日観光客が今後も増えていくことを予想し、学部や進路を選択したものも多いと想像される。

ただ、企業の決算についても、すべての業界・企業が新型コロナウイルスショックで悪化しているわけではない。むしろ、特需に沸く企業もある。業界・企業別の採用動向は、この業界別の業績のメリハリが反映しているともいえる。業界をこえて、ITに強い学生は引く手あまたである。

景気が悪くなると、求人を減らすという単純な論理ではない。成長分野を担う人材は獲得したい。既存の社員には早期退職などを促しつつも、成長分野を担う人材は獲得したいのだ。

ここ数日、ニュースとなったのは、三菱UFJ銀行、大和証券などにおいて、ITなど高いスキルをもった求職者に新卒から年収1000万円、月給40万円などを支給する取り組みだ。他社でもここ数年、高い能力をもつ人、高いパフォーマンスをあげた人にこれまでの新卒の年収をはるかにこえる報酬を支給する動きがある。外資系企業を意識した取り組みだと言えるだろう。