市場関係者の憂鬱「最大のリスクはコロナ終息」

とはいえ、ここまで短期間で幅を持って上がってきた以上、「本当にこのまま続くのか」というリスクの所在が気になるのが人情だろう。

もちろん、リスクはいくつか考えられる。「低金利だから株が買われている」と言ってしまえばそれまでだが、過去1年に関してはなりふり構わない財政・金融政策がさらなる追い風となったことは間違いない。

ゆえに、それが撤収されることが目下、大きなリスクであるという発想に行き着く。モラルハザード以外の何物でもないが、「最大のリスクはコロナ終息」という事実は株式市場を筆頭として金融市場の参加者が薄々感じているものだろう。

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この点、やはり気になるのはワクチンとその効用の先行きである。新型コロナウイルスのワクチンに関しては、日本ではようやく接種が始まったばかりだが、既に海外では順当に接種が進められ、その効果も可視的なものになってきている。その筆頭がネタニヤフ首相自ら「集団免疫に向けた世界の実験室」と称するイスラエルだ。

2月12日現在、人口100人当たりの接種回数は72.2回と圧倒的な世界最速ペースを誇り、2位のアラブ首長国連邦(UAE、49.6回)に大きく差をつけている。

「大量に早く購入した」「1回分につき数ドル多く払っても、すぐに誰もがその10倍を払うようになる」(ともにネタニヤフ首相)といった判断の速さもさることながら、同国が個人の医療記録をしっかりデジタル一括管理していることで、製薬会社もデータを取りやすいというメリットが奏功したようである。

イスラエルは国民のほぼ全員に接種可能なワクチンを確保しているとされ、接種完了も遠い未来の話ではなさそうだ。

ワクチンの効果はてきめん

入手可能な数字を見る限り、ワクチンの効果はてき面である。イスラエルではワクチン接種が昨年12月中旬過ぎたあたりから始まり、新規感染者数(日次)も新規死亡者数(日次)もはっきりピークアウトしている(図表2)。

接種開始から約1カ月程度で新規感染者数に影響が表れ、そこからタイムラグを伴って新規死者数に影響が表れるというパターンに見える。こうした変化が行動制限や気候の変化の結果なのか、それともワクチンの効用なのか。あるいはそれ以外なのか。疫学の専門家ではない筆者に多くを語る能力はないが、現状はワクチンの効力に期待を抱かせるものである。

今後、イスラエルで死亡者数が明確に減り、新規感染者数が根絶される展開になれば、いよいよ金融市場でも材料視されるだろう。こうしたニュースは良いニュースに決まっているが、上述したように、それをマクロ経済政策の撤収と結び付けてリスクだと考える向きは少なくない。

イスラエルという「実験室」で起きたことが世界に波及していくに伴い各種のマクロ経済政策が撤収され、近い将来に金利が上昇に転じ、株売りもたきつけられるというのが市場参加者の恐れるイスラエルリスクである。