繰り返される活動期と静穏期
次に、内陸地震の活動期と静穏期の周期から、海で起きる巨大地震の時期を推定する方法があるので紹介しましょう。これまでの研究で、南海トラフで巨大地震が起きる40年ほど前から、日本列島の内陸部で地震が増加するという現象が判明しています(図表4)。事実、20世紀の終わり頃から内陸部で起きる地震が増加しています。
たとえば、1995年に阪神・淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震のあと、2004年の新潟県中越地震、2005年の福岡県西方沖地震、2008年の岩手・宮城内陸地震などの地震が次々に起きました。
その後も、熊本地震(2016年)、大阪府北部地震(2018年)、北海道胆振東部地震(2018年)などに震度6~7の直下型地震が起きています。このように内陸地震の活動期と静穏期は交互に繰り返されることがわかっており、現在はまさに活動期に入っているのです。
実は、1995年の阪神・淡路大震災の発生は、内陸地震が活動期に入った時期に当たります(図表4)。すなわち、南海トラフ巨大地震が発生する40年くらい前と、発生後10年くらいの間に、西日本では内陸の活断層が動き、地震発生数が多くなる傾向が顕著に見られます。
したがって、過去の活動期の地震の起こり方のパターンを統計学的に求め、それを最近の地震活動のデータに当てはめてみると、次に来る南海トラフ巨大地震の時期が予測できるというわけです。
複数のデータから「西暦2030年代に大地震が起こる」と予測できる
地震活動の統計モデルから次の南海地震が起こる時期を予測すると2038年頃という値が得られています。これは前回の南海地震からの休止期間を考えても、妥当な時期です。たとえば、前回の活動は1946年であり、前々回の1854年から92年後に発生しました。
南海地震が繰り返してきた単純平均の間隔が約110年であることを考えると、92年はやや短い数字です。しかし、1946年の92年後は2038年なので、最短で起きる前提で準備するには不自然な数字ではありません。
こうして複数のデータを用いて求められた次の発生時期は、西暦2030年代と予測されるのです。よって、どんなに遅くとも2050年までには次の巨大地震が確実に日本を襲うだろう、と私も考えています。