記者と編集者の違いとは

——たしかに「×××の決定的な違い」といったタイトルをよく見ますね。

言葉遣いはどんどん変わっていくのですが、切り口や書き手が似てくるというのは由々しき問題です。解決の方向性は、「プラットフォームを優先する」または「自社サイトを優先する」のどちらかです。有料会員制に舵を切っているサイトは後者ですね。限定された読者に向けて、深い記事を出していく。専門分野に強い記者を抱えているメディアは、そうした方向に進みやすいと思います。

一方、プレジデント社には記者がいません。いるのは編集者です。これは「決定的な違い」だと思っています。プラットフォームを優先して、自社サイトを優先しないというわけではないのですが、編集者というのは記者よりも構えが広いのです。専門分野をもつことより、あらゆるジャンルに顔を突っ込んで、いちばん旬の情報を分かりやすく伝えるのが編集者の仕事です。

記者の強みが「情報の早さ、深さ」だとすれば、編集者の強みは「情報の広さ、おもしろさ」です。編集者はどこまでも読者の興味関心にそって、読者を先回りして動きます。記者は読者を置いてけぼりにしてでも、深い情報を取材することが求められるので、その点では対照的だと思います。記者は「読者よ、ついてこい!」、編集者は「読者よ、一緒に行こう」という感じですかね。

編集者のつくるメディアだからこそ、プラットフォームでも読まれる記事づくりにこだわっていきたいと思っています。プレジデントオンラインには無料会員しかありません。将来的には有料化もやるべきと考えていますが、まだその時期ではないと思います。

撮影=宇佐美雅浩
後ろに見える黒い冷蔵庫には、編集長のおやつが常備されている

「広く届ける」と「深く掘り下げる」

——なるほど。そうすると編集者に求められている役割とは、どのようなものでしょうか。

難しいのですが、バランス感覚だと思います。読者におもねるのでは行き詰まります。いわゆる「ページビュー(PV)至上主義」では、釣りも煽りもやり放題です。プラットフォームのアルゴリズムは、そうした悪質なやり方とまっとうなやり方をまだ判断できません。だからこそ、ある程度の影響力があるメディアとして、バランス感覚をもたなければいけないと感じます。

撮影=宇佐美雅浩
積み上がっているのはほとんどが編集部宛の献本だ

最も重要なことは、プレジデントオンラインのトップページを定期的に訪問してくださる読者の期待に応えることです。羊頭狗肉の記事を並べていれば、あっという間に見捨てられてしまうでしょう。プラットフォームに依存すれば、悪質なやり方にどんどん流れてしまいます。「広く届ける」と「深く掘り下げる」のバランスが大事ですね。