豪州でソーシャル・ディスタンスの習慣を身体に覚え込まされてきたK子さんは「日本に着いて、怖くて外に出られなかった」と語る。現地では、街行く人々がまるで全員がコロナに感染しているかのごとく、他人とはきちんと2メートルの距離を取って行動してくれるそうだが、日本ではそうした配慮をする人は皆無だ。

「気にせずお越しください」と言われ…

「自主隔離のため、羽田空港から実家に直行したんですが、着いてまもなく、私の帰国を知った近所の人が次々にやってきたんです。私がウイルスを持ち込んでいるかもしれないのに、全然そんなことはお構いなしで『お疲れさま』と果物やお菓子を持ってきたのには驚きました」

「医療機関からは、『お父さんに付き添ってうちの病院に来てほしい』と電話がかかってきました。『帰国したばかりで、外出できない』と説明しても『気にせず当院にお越しください』と言われたのはとてもショックでした」

K子さんの知人から届いたメルボルンのショッピング街・バークストリートの様子

 

「PCR検査では陰性だったものの、今は陽性かもしれないのに、混んでいる街に入り込んでしまった」「街では誰も『私との距離』を取ってくれない。誰かにうつしてしまったのでは?」K子さんは外出するたびに後悔にさいなまれたという。

両親の世話を続けながら14日間の「自主隔離」期間を無事に終えたK子さんは、ようやく父親を連れて外出することになった。しかし、行く先々で「日本の社会におけるコロナ予防意識の低さ」を痛感したという。

一番ひどいと感じたのは、近所のクリニックの待合室だった。

「患者さんたちがコロナ禍の前と同じように隙間なく並べられた椅子に座っておとなしく診察を待っているんです。私もそこで父と並んで座っていましたが、感染対策として消毒液が置いてあるぐらい。予約制にして待つ人を減らすとか、なにかできそうなものなのに……。自分たちは大丈夫って確信しているんでしょうね」

人数制限が厳格なオーストラリア

では、オーストラリアの感染対策はどうなっているのか。K子さんは「行政からの予防のための指示、徹底が明確なんです。日本の緊急事態宣言のように政府が都道府県別の対策を決めるのではなく、各州の政府が権限を持って対策に当たる」と説明する。

具体的には、「レストランは何平方メートルごとに顧客何人までと、具体数値で指示」「スーパーへの入場人数は、面積から算出された制限」などがあるという。K子さんが暮らすクイーンズランド州では、以下のような厳格な規制が出されたこともある。