ソーシャル・ディスタンスをまるで理解していない

「緊急事態宣言」が首都圏に出されてから10日以上が経った。行動制限をしても、依然として感染者数が減る気配は乏しい。

街を行き交うマスク姿の人たち(東京都新宿区=2021年1月25日)
写真=時事通信フォト
街を行き交うマスク姿の人たち(東京都新宿区=2021年1月25日)

加えて、英国由来の新型コロナウイルス変異種の感染者が静岡県内で確認された。宣言発出に伴い入国者の水際対策は強化されたが、変異種ウイルスはすでに日本国内のあちこちに広がっているという見方もあり、「水漏れ」は今もなお続いているようだ。

日本がいつまで経っても抜本的な対策が取れないのはなぜなのか。一時帰国した在外日本人の体験談を追いながら、問題を挙げてみたい。

今回話を聞いたのは、90歳を超える両親の介護のためにオーストラリアから一時帰国したK子さん(50代女性)。日本人も多く住む同国東海岸のクイーンズランド州に居を構え、現地での暮らしは20年を超えている。

K子さんのように、強力な感染対策を打ち出している国からの帰国者の目には、日本人が日常的に行っているコロナ対策は「予防意識が低い」と映るという。

「スーパーのレジの列など『距離を取れ』とマークが記されたところではしっかり守っているのに、他のところでは全然お構いなし。人との距離を取るのは他人からの感染を防ぐため、というソーシャル・ディスタンスの意義なんてまるで理解してないように見えますね」

感染力が従来よりも1.7倍強いといわれる変異種が市中に広がりつつある中、果たしてわれわれは現状の方法を漫然と続けていてもいいのだろうか?

「コロナは自分とは無縁」と思う人ばかり

K子さんが住むオーストラリアは厳しい規制を敷いているおかげで、世界でも有数の「コロナ抑制国」と認知されている。直近の米ジョンズ・ホプキンス大の資料によると、オーストラリアの人口100万人当たりの感染者数は1000人強と、これまでに1000万件以上のスクリーニングテストの実数が分かる国の中では、封じ込めに成功したとされる中国に次いで感染者の割合が少ない。

ちなみに日本は100万人当たり2900人超という数字が出ているが、テストの実数は豪州の半分程度の650万回にとどまっている。

現状、日本に入国した帰国者らはPCR検査を行ったのち、「自主隔離」を求められている。しかし、広く報じられているように強制力に欠けるため、買い物に出かけたり、飲食店でご飯を食べに行ったりしても、罰する方法が曖昧という状況が続いている。その上、日本では、一般市民がお互いに距離を取り合うことなく、コロナ禍前と同じように街を行き交っている。